東本昌平作品

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最近、内容を知らずに、単行本を衝動買いしてしまう事が多いです。
その中の一冊が、この作家の作品でした。当たりです!

ネタバレ、注意!


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SS - 漫画 (初稿:2001/04/09, 最終更新:2001/04/17)

頭文字Dのヒット以来、クルマを題材にした漫画を、多く見かけるようになりました。
かく云う私も、趣味にクルマが追加されてからと云うもの、そう云う漫画を読み漁るようになっちゃいまして。

そんなとき、本屋で見付けた単行本、それが、このSSでした。

主人公は、ダイブツこと大佛(おさらぎ)。
自動車整備工場で働く、中年の整備士。

愛する妻も子供も居るダイブツは、夜な夜な、スタリオンで走る。
倉庫の片隅で眠っていた、三菱スタリオン4WDラリーを引っ張り出して。

ってな感じですかね。上手く云えませんが。

ダイブツは昔、ラリードライバーだったんですが、妻の妊娠を機に、ラリーの世界を離れ、整備工場に就職。
どうにもならない流れに呑まれ、今の自分に悩んでいる、中年男性なんですね。

色んな想いを乗せ、ステアリングを握るダイブツ。
この独白が、私には大変、共感出来る部分でして。

例えば、第5話。
スタリオンで、雪道を全開で走るダイブツ。

「もっといけっ!」
「まだいける!」
「もっといけ!」
「踏め!」
「踏むんだ!!」

だが、あるコーナーで、アクセルを戻してしまう。「ダメだ。」
派手にスピンして、停車。一息ついて、クルマを降り、ダメージを確認して、ダイブツは思う。

やっぱり、あと一歩踏み出せなかった。
まるであの時といっしょじゃないか・・・

いい年した中年が、あれこれ悩みながら、クルマを走らせる・・・。
クルマを通して、自分を、今を、人生を考える。

私も、夜な夜な、泣きながら愛車のステアリングを握る人間(笑)としましては、凄く分かるシチュエーションであり、安心出来るエピソードでもあるわけです。
安心出来るってのは、何と云うか、中年だって悩んでもいいんだ、と云いますか・・・。

私はまだ、中年になるまでに、もう少し時間があるんですが、今、私が悩みながらクルマを走らせていて、こう思うわけですよ。
何故、今頃、こんな事で悩んでいるんだろうか?こんなのは、思春期のときに悩んどく事じゃ無いのか?いい年して、まだ、答えが見付けられていないのか?」と。
こんな私の不安を、「ああ、私はまだ、悩んでていいんだな」と云って貰えた安堵感と云いますか・・・。

色々、複雑なんですよ、男心って(笑)。

ダイブツ 24KB
ダイブツ
三菱スタリオン4WDラリー

他にも、好きなエピソードがありまして。第6話なんですが。

ダイブツの日常を描いた話で、妻に頼まれて、自転車の修理をするんです。
修理が終わった自転車に乗って、ダイブツが街を走りに出ます。
勤めている会社が、不況でボーナスが出ない事など、生活の不安が、自転車で走ってみて、吹き飛んじゃうんですね。
気分が良くなったダイブツは、ついでに、自分の生まれ育った街まで、その自転車で行ってみる事にしました。

自分の幼い頃を思い出し、小学校に通った道を、自転車で走ります。
懐かしい想いと、余りに変わった街の風景に戸惑いながら、ダイブツは小学校に辿り着きます。
校庭にあった筈の、大きな公孫樹の木は、既にそこに無く、ダイブツは、今は無いその公孫樹の木に、こう問い掛けます。

僕は、頑張ったでしょうか?

な、泣ける!ええい、このエピソードで泣けない奴ぁ、頑張って無ぇ(おいおい)!

こう云う、ダイブツの人間としての葛藤が描かれているところが、他のクルマ漫画と一線を画してるのではないでしょうか。

構成も、上手いと思います。
前述の第6話は、第1話に出て来るダイブツの幼年期の韻を踏んでいますし。
他にも、違和感無く、時間の行き来が出来てますしね。

あと、擬音も、独特ですよね。
タイヤがグリップする音は「ニッニッ」、ポルシェのドアが閉まる音は「ム゛」なんて(笑)。

ギラ子 18KB
ギラ子
スバル・インプレッサWRX
不思議に思った事もありまして。
第25話以降の、インプレッサに乗るギラ子の表情なんですが。
ギラ子の独白と、その表情が、上手く一致してないんですよ。
さっき、怖がったと思ったら、次のコマでは無表情に戻ってる・・・、とか。

これは、ギラ子はクールな現代っ子である、って云う表現なんでしょうか?

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