<岩戸要塞:司令執務室>
「まずいですね・・・・・。」
奈々は紅茶を一口含みながら呟いた。
「ぱぎゅ...ごめんなさいですぅすぐ淹れ直しますぅ」
「あぁ.....紅茶の事では...ないんですよ?」
恐縮する澪に苦笑しながらも奈々は再び難しい顔をし考え込んだ。
「どうか・・なさったですか?」
不信に思った澪が奈々に問い掛けるが奈々の返事は今ひとつ要領を得ていない。
「敵艦隊が、三式弾を使用しました。」
「ぱぎゅ?それが...なにか?」
澪は奈々の言った意味がよく解らないのか小首をかしげる。
「そうですね・・・普通ならそう言えるんです・・・ですけれど今回は被害があまりに帝国側に傾いているのですよ。」
「ぱぎゅ?」
「解りませんか?....."被害があまりに帝国に傾いている..これは亜細亜聯盟の陰謀に違いない"....と騒ぎたい方たちが居る・・・ということなのです。」
「でも..それは。」
反論しようとする澪に奈々は目を伏せ静かに首を横にふった。
「やった、やらないではないのです。"やった可能性が有る"だけで充分なんですよ。それを足がかりに、再び戦端を開く・・・もちろん簡単な事ではないですが、不可能ではありません。実際まだ戦いたい人たちは大勢いると思いますよ?...政治は難しいのです。」
「閣下は....政治がお嫌いなんですね......。」
「ええ.....嫌いですよ...ですけれど司令官職につく者は無関心で居るわけにはいかないのです。」
「そうなのですか?」
意外な台詞に澪は奈々に聞き返す。
「ええ....たとえば..ささいな作戦のミスが元で、味方の筈の自国の政治業者に足を引っ張られて戦線全体が瓦解する事もあるんです。」
「ぱぎゅ〜大変なんですね」
「ええ..大変なんです。..........できれば一生近づきたくは無い領域ですね。」
(ですけれど、今この岩戸”市"の行政を一手に引き受けていらっしゃるのは閣下御自身ですし、文官の私が見ても完璧に機能しているのは閣下が優れた政治家だって事だとおもうのですけれど...閣下はどう思われているのでしょう。)
澪の想いは言葉になる事は無かった、多分、奈々は澪の問いにただ微笑を返すだけであろうから。




























少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第五拾五話 ”逆撃(後編)” 



<フレーズベルク:コックピット>
母艦が近づくにつれノイエは焦りを感じていた。 部下の1/3を永遠に失い、生き残った半数は傷つき戦闘どころではない、同様に撤退中の疾風部隊も大半がワルキューレの脱出ポットを抱えている...今襲われたら守りきることなどできない....。
『団長.......。』
「解っている.......だが、どうにもならん。」
ラミルの通信にも苦々しい表情で答える。 (解ってはいるのだ。私が敵なら、私の部下達という名の爆弾を使ってラグナロクや大和を撃沈する絶好の機会だ・・・・逃したりはすまい。) ノイエは部下を率いつつ撤退しながら、危機感を募らせていた。 (だが、何時攻めて来る?...やはり着艦を開始して収容を完了させるまでか?あるいはあの忌々しい三式弾に紛れ込ませて吸着型の爆弾を脱出ポッドに仕掛けて内部から艦を破壊するのか?) ひとしきり考えたが良い策が浮かぶわけもなく、ノイエはいつになく自分が弱気になっている事に気が付く。 (いかんな..........これでは部下に心配を掛けてしまう.........お前らしくないぞ!アーダルベルト・フォン・ノイエ!なにがあっても部下と艦隊だけは守り通すのだ!) もう・・・・・・・ノイエに迷いはなかった。
「何れにしても、今、打てる手は無い.......(いざとなったら.........)」
『しかし......。』
「くどいぞ!副長!...艦隊には防空陣がしかれている.....なんとかなる...」

<大和:第1艦橋>
「ノイエ准将麾下のワルキューレ部隊撤退を開始、本艦隊到着まで、あと20宇宙キロです。」
「楠香君、合流までどれくらいだね?」
楠香の報告にZEEKは更に問いかける。
「お待ちください............あと30分ほどです。」
「30分か........結城君全砲門、いつでも撃てるように準備したまえ...ただし三式弾は使うな。」
「了解!全艦対宙戦闘準備!全兵装対宙戦闘準備!」
美瑠の指示の元,大和の全対宙火器が息を吹き返したかのように稼動を開始する、そして大和から発せられた命令は即時に全艦艇に伝えられ艦隊全ての対宙火器が息を吹き返しtかのように稼動を始めた。

<麗風:飛鈴機>
『隊長〜〜』
母艦に近づくにつれ押し迫った不安が美都里の中で募る。
「わかってるわよ!」
(わかってる....だから先輩は私達を帝國軍の護衛につけたんだから.....もっとも部下達が戦える状態じゃないのもあるけど)
「なんにしても....美都里!貴女そんな不安を出すんじゃないわよ!部下が不安がるでしょ?」
『でも近衛総隊長がいらっしゃるわけでもなし、黒龍隊長も未だ出撃してません.....極め付けが近くにいるのがあの.........』
「綾!貴女まで!」
『飛鈴隊長.....ですが!』
「いい?以前のことはともかく今の彼らは味方なの!少なくとも先輩はそう信じてる...だから私達も信じるの.....それに私たちがいるのに傷ついた味方をむざむざ敵の餌食になんてさせるものですか.....ともかく!襲ってくる敵機は..私達だけでなんとしても堕とすのよ?」
『『......了解』』
(とはいえ.....私も信じきってるわけではないんだけど.......さて、私はともかく司令や先輩達の信頼にどう応えてくれるのかしら?銀の騎士さん?)
飛鈴は意地の悪い笑みを浮かべながら先行している銀の騎士騎乗のフレーズベルクを見つめた。

<フレーズベルク:コックピット>
飛鈴達の通信はノイエも聞いていた.....そして苦い笑いとともにノイエはその会話を受け止めていた。
(ふむ..............自業自得とはいえ..帝國、聯盟の水面下の対立が.....いまだしこりとして残っているとは.....やはり守護天使殿の危惧の通りか.....。)

<1週間前:岩戸要塞司令室>
「お呼びですか?霧島司令」
ノイエは奈々に呼び出されていた。
「お待ちしていました。大佐」
奈々は飲んでいた紅茶をそっとソーサーに戻すとノイエに向き直る。
「お呼び立てしたのは他でもありません、次の出撃時の指揮を大佐にお願いしようと・・・思ってるんです」
あまりに唐突な話題にノイエは戸惑った...というより絶句した...この女...一体何を考えているんだ。
「ふふっ......さすがの大佐も戸惑っていらっしゃるようですね。...でもこれは決定事項なのです。次の出撃が、連盟方面であれ、帝國方面であれ...指揮は大佐に一任します。大和に将旗を掲げて出撃していただきます。」
「閣下.....」
「大佐..............必要な通過儀礼とはいえ大佐は艦隊内に不和をもたらしました......。」
ノイエは奈々の言わんとするところが理解できた気がした。
「はい、確かに私の失態です、両陣営の将兵にしこりを残すことになったでしょうな。」
「ですけれど.....帝國艦隊も連盟艦隊も今は味方同士なのです.....次回、大佐に指揮を取っていただく最大の理由は、大佐に連盟側のスタッフを知ってほしいのです。」
「私に馴れ合え・・・と?」
意地の悪い笑みを浮かべて応えるノイエに奈々は一瞬きょとんとするが、優しい笑みを浮かべ応えた。
「ええ.......その通りです、大佐」


<フレーズベルク:コックピット>
(せっかく麗しの守護天使殿にもらったチャンスだ................奴等を友とするからには.....失地は回復せねばな。)
ノイエの心の呟きが終わると同時についにくるべきものがやってきた。
「招かれざる客の登場か.............存外敵も堪えしょうがないな.........」
ノイエは苦笑とともに愛機を加速させていた....今なら先手が取れる。

<麗風:飛鈴機>
(銀の騎士は先制にでたのね..............では私達は守りに入るしかないわね)
「エンジェルリーダーよりエンジェル2、エンジェル3!周囲警戒を密に!!前方に現れた敵機だけが全部ではないかもしれないわ!」
『でも飛鈴隊長?銀の騎士は突っ込んできましたけど..........。』
「綾!.........私達の任務は護衛よ!それに銀の騎士の機体の機動性があればすぐ戻ってくるわ!それと........」
「それと?」
「陽動は.....戦術の基本でしょ?」
飛鈴の指摘とほぼ同時に後方に敵機の集団がワープアウトしてくる。
「ったく.......エンジェル3!迎撃に!」
『え〜〜〜一騎でですか?』
焦る綾を救ったのは意外な人物の冷静な申し出であった。
『こちらブレード1..援護に入る』
「ブレード1!!アクリン少佐!!その機体の状態では.......」
心配する飛鈴をよそにラミルは自信に満ち溢れた声で返事をする。
『心配無用!団長の命令だったから撤退したが私は充分に戦える。卿らこそ足手まといになるな?』
(誰もが思いもしなかった無念の敗退........暴れ足りないのは私達だけではないって事か.....)
「解りました,少佐、エンジェル3..綾をお願いします」
『Ja!任されよ! エンジェル3!往くぞ!続け!奴らに宇宙戦闘の何たるかを教えてやるのだ!』
『ふぇ〜〜〜ん、この人、近衛総隊長よりやばいよ〜〜〜』
殺気満々のラミルはスロットル全開と言わんばかりに敵陣めがけて突進してゆく、後に残ったのは綾の情けない嘆きだけだった。

<大和第一艦橋>
「帰艦中の部隊に敵艦載機群が襲いかかりました...その数80...2方向からです。」
楠葉の報告にZEEKは予測の範囲内だったのか冷静に答える。
「対空援護は?」
「ダメです...完全に此方の死角です」
「そうか....」
答えを聞いたZEEKは艦長席の艦隊内放送ボタンを押し命令を発した。
「告げる、こちら艦長......対宙機銃群を手動で掃射する準備をするように!尚、IFFは信用するな!繰り返す!対宙機銃群を手動で掃射する準備をするように!尚、IFFは信用するな!」
そしてスイッチを切ると呟いたのだった
「もう一撃..........あるな........」
「え?かんちょ「敵第3陣目がワープアウト!」」
ZEEKの呟きを聞きとがめた茉莉慧が聞き返そうとした時、楠葉の悲鳴に近い報告が届いた。
「..........死ぬなよ」


<麗風:飛鈴機>
それは唐突に現れ目の前を稲妻のように駆け抜けていった。
その攻撃は鋭利な刃物のように鋭く一瞬で4機の味方機と自機の左腕の機能を奪い去り飛鈴の目の前を通り過ぎていった。
葵の一番弟子を自認する飛鈴であったからこそ左腕だけで済んだといえよう。

「何なのよ!!!一体!!」

突然のことでパニック寸前の飛鈴を現実に呼び戻したのは美都里の悲鳴に近い呼び声だった。
『た...隊長!!!大丈夫なんですか?』
「私は大丈夫よ!..でもエンジェル2気をつけなさい!敵は先輩並みの腕だわ!」
『それって.....か「言わないで!!!今それを口にしたら生き残る自信がなくなるわ!」...すみません』
「いいのよ....でも......敵の腕前が先輩並みであるのは事実よ....気をつけなさい」
飛鈴は呆れてしまうくらいに絶望的な今の状況に苦笑しながら...敵を観察する余裕を取り戻していた。
真紅の機体を先頭にショルダーアーマーのみを紅くした機体が3機...ダイヤモンド編隊で味方に襲い掛かろうとしていた。
すかさず襲い掛かる敵編隊に牽制弾を打ち込みながらも飛鈴は無謀とも思える防衛戦を何とか継続していた。
(赤い彗星にレッドショルダー?...敵さんもジョークが効いてるって事かしら?...........ん?)
防衛戦のさなか飛鈴は敵隊長機と思われる紅い機体のショルダーアーマーに何か書かれているのに気がつき拡大をし...驚愕した。 敵隊長機のショルダーに描かれていたのは部隊章であった..........その部隊章は飛鈴もよく知る部隊章であり半ば伝説と化していた。
その部隊章とは白い盾のマークでありそこには紅くはっきりと"R"の文字が書かれていた。その紋章を使うパイロットの名はフォン・リヒトフォーフェン...つまり............。


「紅い男爵(レッドバロン)....................宇宙時代にもなってプロイセンの亡霊?.....でも腕は確かだわ....。」




<紅い機体:コックピット>
「...........ほう..私の初撃を及第点ながら避けるか........空間転移装置のテストとはいえ...残敵掃討などという面白くない任務であったが..楽しめそうだ」
まだ若い...金髪碧眼の男は飛鈴機を睨みながらニヤリと口の端を吊り上げた。
『アルシュミット大佐!敗残兵の処理は我等ルフトリッターがいたします..大佐は心ゆくまでお楽しみください。』
「すまないね...ゲーリング君」
『ですが出来ましたら何機か出来そうな敵機を撃つことをお許しください』
「あれ(飛鈴機)の僚機か......よかろう...私は銀の騎士が戻ってくるまでの余興で我慢するとするよ」
男...アルシュミット・フォン・リヒトフォーフェン大佐は不敵な笑みを浮かべつつ部下であるゲーリング少佐に指示を出すと飛鈴に向かい突撃を開始した。

<麗風:飛鈴機>
油断無く敵将であろう紅い機体を睨んでいた飛鈴は敵機の変化に気がついた。
紅い機体は配下の機体と別行動をとり此方に向かってきた...そして......

「騎士の礼?態々仕掛けてくるのを教えてくれてくれるの?.......私相手に遊ぼうって言うのね、全く馬鹿にしてくれるわ」
飛鈴はなめられた物だと苦笑するしかなかった......確かに彼我の実力差は絶望的だ.....だが
「でも...私だって先輩達の後輩なんだから.....簡単にはやられないわ!」
戦いとは駆け引きだ...相手の実力がいかに傑出しているとはいえ仕掛けてくるタイミングがわかっているならある程度打つ手もある。
「ハンデのつもりなんでしょうけど......私達を甘く見ない事ね!」
そう...勝つ事はできなくても......負けないだけなら何とかなる。
ガキン!!....そんな大きな音がしたような気がした。
アルシュミッとの鋭い一撃をよけきれないと判断した飛鈴は既に機能を停止している左腕を犠牲に機体を護った。

『あまい!!!』

接触回線を通じて敵の声が聞こえたような気がした......その声に本能的に危険を感じ取った飛鈴は次の瞬間機体をロールさせていた。

<アルシュミット大佐機>
「あまい!!」
左腕を犠牲に此方の攻撃をかわそうとする飛鈴機にアルシュミット大佐は斬激の力をさらに入れる事により飛鈴機を完全に落とそうとした。
「なに?...........馬鹿な!!」
彼は飛鈴の機体を完全に捕らえた筈だった....しかし結果は...


<麗風:飛鈴機>
「左足....小破...か......先輩...そろそろ助けに来て下さぃ〜.....私...そろそろ限界ですぅ〜(グスッ)」
やっとの事で避けた飛鈴は既に涙まじりであった。
再び距離を離す二人の機体........しかし飛鈴の機体はすでに満身創痍であり,辛うじて動いている事は誰の目を見ても明らかだ。

<アルシュミット大佐機>
「1度ならず2度までも......どうやらまぐれではないみたいだな」
アルシュミットは歓喜の声を上げていた
「敵にも出切る奴がいる!これはなんと喜ばしい事か!!!総統陛下と神に感謝せねば!...そしてその礼はやはり最大の一撃で行くしかないな!!」
しかし.....アルシュミットの3回目の突撃は叶わなかった。
アルシュミットが本気の、そして3回目の突撃と実施しようとしたその瞬間を狙って、光の龍が突撃してきた。
「なっ....何なんだあれは!!!!」
そのあまりに非現実的な光景に一瞬我を忘れそうになるアルシュミットであったが天性の勘で龍を避け事なきをえた、しかし、本当の攻撃はその直後にやってきた。
光の龍が突撃してきたまさにその方向から1対の光の翼をはためかせた美女がサムライソードを片手に突撃して来る光景はアルシュミットを絶句させるのに充分であった。
彼女は推進炎を全く上げもせず恐るべきスピードで突入してくると鋭い一撃をアルシュミットに放った。
咄嗟に体をひねって避けたアルシュミットではあったが,鋭い斬撃はアルシュミット機の奇しくも左腕をもぎ取ったのだ。
「なに!!」
何とか安全圏まで退避したアルシュミットであったが...不利ともいえるこの状況でこの男は不敵な笑みを浮かべていた、そう...彼はこの状況を楽しんでいたのだ。
「私が被弾・・・か....面白くなってきたじゃないか」
しかし、彼の次のアクションは起こされる事無く完了した。
『大佐!そろそろ推進剤の残量が帰投限域です!』
「くっ......所詮は空間転移用の量産試作機.....私はともかく部下の機体の帰投を考えればここらが潮時か....退くぞ!ゲーリング君!」
『はっ!』
言うが早いかアルシュミット機とゲーリング機から強力な閃光弾が放たれ暗い真空の宇宙をまばゆく照らし出し全てを純白の世界に染め上げた。

そして光の渦が消えた時”紅い男爵”とその部下達は既に撤退を完了していた。


<麗風:飛鈴機>
「退いてくれた......助かったの?」
一方,九死に一生を得た飛鈴であったが......
『エンジェルリーダー!無事か?』
「さ...桜小路先輩?...というより茉莉慧ちゃん?」

そう..近寄ってくる機体のシルエットは...まさに"茉莉慧”であった。
『..............お前もそう思うか?』
「ええ.......詩織先輩ですね?」
飛鈴は...なぜか詩織の高笑いする姿を思い浮かべ...冷や汗を掻い
『ああ..........』


「『はぁ.............』」
二人の間に痛い沈黙が流れるには充分だった。
「近衛先輩の方が良かったですか?」
『.........俺にそれを言わせるのか?』
「クスッ....愚問でした」
ようやく飛鈴にも笑みが戻り場の雰囲気が明るくなる。
『手ひどくやられたな...........』
「まだ終わってませんよ?敵艦隊はどうするんですか?」
『心配ない......もう..........終わる』
”戦姫”の差す先で敵艦隊は炎上していた。

<10分前:大和第一艦橋>
「頃合だな........桜小路君......二水戦に連絡、作戦開始..狩りの時間だ...とな」
「了解!」
この時、艦橋に仁王立ちしていたZEEKからはじめて攻撃命令が発せられた。
「ねえ美瑠.....そういえば.....二水戦...どこに行っちゃったの?」
「ミラージュの傘の元...敵に気づかれずに進撃してるわ........」
「え?じゃあ...航宙隊は囮だった訳?」
「いいえ.....三段構えの迎撃戦だったわけだけど......敵もさるものって事だったと思うわ」
恋の質問に美瑠は被害の大きさに悲しげに首を横に降った。
そんな美瑠の心境とは無関係に戦いは進む........そして楠葉の報告からの展開は決着と言っていい変化であった。
「電探に感有り、二水戦を確認しました.......作戦想定宙域です」



<軽巡洋艦:”豊川”艦橋>
ようやく出番がやってきた戦隊司令の珠蓮中佐は青筋を立ててガナリ立てるように命令を下した。
「野郎ども!合戦だ!.....無念に全滅したパイロット達の為にも一撃で決めるぞ!(注:全滅してません)」
「「「「応っ!!!」」」」
「近衛...仇はとってやるからな...成仏しろよ(注:死んでません)」
などと公人や葵が聞いたら張り飛ばされそうな事を呟きながらも目標である敵艦隊の動きを見逃さぬ
「64(ロクヨン)式...全弾装填完了!」
既に準備万端整っていた第二水雷戦隊の各艦から装填完了の連絡が来るまでに10秒も必要としなかった。
64式亜光速宇宙魚雷:亜細亜聯盟最大にして最速の宇宙魚雷である。無誘導であることとその高速性から扱いの難しい魚雷である。
「64式なら一艦一殺だ!外すんじゃねぇぞ!!.....てぇっ!!!!」
今その宇宙魚雷という名の猟犬が獲物を求めて解き放たれた。
猟犬達は”瞬く間”に敵艦に近寄りその艦体に吸い込まれる、一瞬後艦内でそれは炸裂した。

<麗風:近衛隊長機:コックピット>
『デルタワンからブルーリーダーへ、作戦は第二段階へ移行する。繰り返す、作戦は第二段階に移行する。』
茉莉慧からの通信を受けた葵は了解の旨を伝えると即座に次への行動を起こした。
「ブルーリーダーより各機へ、二水戦が来るわ!射線から退避!ブラック5,7射線上よ!!急いで退避!」
葵達熟練パイロットが前線に残ったのは3つの理由からであった。
一つはもちろん傷ついた僚機の撤退支援 そして二水戦進出に向けての囮、さらには迎撃用の機銃座の破壊が含まれていた。
(敵艦隊の撃滅は果たせなかったですけど...なんとか課題はクリアしたと思うのだけれど...ZEEK先輩...どう思いますか?)
全機が安全圏に退避し終わるのとほぼ同時のタイミングで二水戦の放った猟犬達は全ての艦艇に喰らい付いた。
敵艦隊は亜光速で迫る猟犬たちになすすべも無く爆炎と共に消え去った。
艦載機群も艦隊消滅と共に糸の切れたマリオネットの如く稼動を停止した。 黒色艦隊との2度目の戦闘は甚大な被害を出しながらも辛うじて勝利する事が出来た。
果たしてこの新たな戦雲はの行くへはどこまで行くのか.......平和への想いとは裏腹に、新たなる戦いの序曲は厳かに演奏をはじめた。







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あとがき
ZEEK:五拾五話です・・・・。
茉莉慧 :速く上げるっていってたのにずいぶんとかかかりましたね
ZEEK:筆が乗らなくてね・・・・
葵   :掲示板荒らしでやる気がなくなったとか?
ZEEK:それもある.....
詩織  :いつもより長めですものね
ZEEK:それも...ある
三人娘 ;どっちにしろ"無様”ですね
ZEEK:うぐぅ









続く?