<ラグナロク艦橋>
「フィリア君....艦の調子はどうだい?」
艦橋に立つエドワードは自分の副官に声をかけた。
「はい、陽電子炉、フォールドシステム共に稼働良好です。」
”コントロールパネルから手を離して”彼の副官”フィリア・ノイス”少尉は答えた。
「味方艦隊は苦戦するだろう...少し遅れて登場して救ってやるのもヒーローっぽくて良いな。」
エドワードの無責任な発言に”おいおい...そういう問題じゃないだろ”などと艦橋の人間は思ったがあえて口にせず急いで出航準備を進めていた味方を救うために.........。





















少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第八話”黄泉回廊沖会戦(前編)”


<大和作戦会議室>
「敵艦隊の全容が判明しました。内容は大型戦艦1戦艦6巡洋艦8駆逐艦多数の大規模艦隊です、宇宙艦隊旗艦”エンタープライズ”も確認されています。」
茉莉慧が敵艦隊の全容をディスプレイしていた。
「と言うことは敵の第一,第二艦隊か......確かに二個艦隊だがこちらとまるで内容が違うぞ。」
「まともに戦って勝てる相手じゃないね?」
珠蓮 と瑠璃が腕を組んで難しい表情をしている。
(ああ....茉莉慧さん...自分は第七艦隊の護衛につけて感動です)
一人話も聞かずに茉莉慧ばかり見てる奴もいるようです。
「艦載機を有効に使うしかないでしょうね。練度だけなら敵に負けてませんわ。」
「艦載機の活躍だけで何とかできる戦力差ではありません....気持ちはあり
がたいですが無理はしないで下さい。」
息巻く葵をたしなめる奈々.....戦況は思いっきり芳しくない。
(どうやら我々は要塞司令部に見捨てられたらしい)
約一名を除く全員が同じ意見に達したときzeekは案件書を取り出した。
「.....そこで第七艦隊司令部として迎撃案を出そうと思う。この配置図に従い各艦は布陣を終了していただきたい...早急に。」
奈々とzeek以外はその布陣図を見て立ち上がった。
「「「この布陣は!!!」」」

<帝国艦隊旗艦”エンタープライズ”艦橋>
「長官、まもなく黄泉回廊です。」
エンタープライズ艦長アール・グレーチェン少佐は初老を迎えようとしている上官に報告を行った。
「うむ.....ハニー君...敵は出てくると思うかね??」
「はい、岩戸要塞の防御力は確かに驚異的ではありますが、如何せん攻撃力がありません、従いまして敵はどこかで我々を迎撃するしか有りません。」
参謀長のメビウス・ハニー中将の明確な答えに満足したのかウィルバル・ヨバフィム・バルゼー元帥は一人頷くと誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いた。
「これで姫の出番はありませんな...。」

<大和艦橋>
「敵艦隊、予定の宙域を侵攻中!速力20宇宙ノット!」
楠香の報告が飛ぶ、ここまでは予定通りである。
「zeekさん...我々もそろそろ目立たないといけませんね。」
「はい....茉莉慧君...DG信号を全艦に伝達してくれたまえ。」
「了解しました。DG信号を発信します。」
奈々の指示がzeek経由で飛ぶ。作戦は...開始されたのだ。
≪茉莉慧お姉ちゃん....どうしたの??≫
「え??」
≪あ....緊張してるんだ♪茉莉慧おねーちゃん可愛い♪≫
「ミコちゃん!からかわないで!」
≪でもそんなガチガチじゃ...死ぬよ??≫
もっともである....実際ミコの方が実戦経験は豊富のようだ。
(私を....励ましてくれるの??)
確かにガチガチに緊張していた茉莉慧であったが幾分かほぐれたようだ。
≪そうそう♪その調子だョ♪≫
「ミコちゃん...ありがとう♪」
その様子に気が付いた奈々はそんな会話を微笑ましく見ていたが、不意に茉莉慧と目があう,奈々は微笑んだが茉莉慧は赤くなってうつむいた。
(霧島司令に気づかれた??...なんか恥ずかしいなぁ)
≪お姉ちゃん..何赤くなってるの??≫
「いいの!気にしないで良いわよ」
≪わ〜〜妖しいんだ≫
そうこうしているうちに敵艦隊が作戦開始宙域にさしかかろうとしていた。

<エンタープライズ艦橋>
「敵戦力が判明しました...超大型戦艦1...のみです」
「大きいな....800m級か」
「ですが1隻だけというのは不自然です、伏兵の確認をした方が良さそうですね」
ハニー参謀長の意見を入れ慎重に進撃が開始された。

<大和艦橋>
「敵さん...慎重ですな....。」
「そうですね...被害担当艦とはいえ1隻だけというのはやっぱり妖しかったでしょうか?」
「...そうですね...餌をばらまいてもよろしいですか??」
「かまいません...やってください」
「美瑠君、宇宙魚雷全段発射だ!うち6門は放射成形炸薬弾頭を許可する。」
「放射成形炸薬弾頭ですか??」
美瑠は驚いて聞き返していた。
「敵戦艦群に打ち込め....このままではいずれにしろ不利だ。」
「了解しました。宇宙魚雷連続発射!目標!敵戦艦射出開始!」

<エンタープライズ艦橋>
「敵艦、宇宙魚雷を射出、多数本艦隊に接近中」
オペレータの逼迫した報告が艦橋に届いた。
「戦艦部隊を前へ!」「長官!しかしそれは危険では!」
「かまわんよ敵の宇宙魚雷程度で沈むようなヤワな戦艦は連れてきておらんよ。」
ハニー参謀長の制止を振り切ってバルゼー元帥は戦艦による防御を指令した。
相手が通常の宇宙魚雷であったなら、あるいはこの命令は至極妥当であったろう、しかし....この宇宙魚雷群の中には放射成形炸薬弾頭搭載型が含まれていたのだ。
放射成形炸薬弾頭、それは成形炸薬弾を核弾頭レベルで実現した発掘兵器である。
装甲を突き破って艦内に放射能を撒き散らす恐怖の弾頭なのである。
帝国の戦艦群は大和から射出された24発の宇宙魚雷にはびくともしなかったが残り
6発には耐えることができなかった。
「戦艦アドミラルレーダ撃沈!!、戦艦ビスマルク大破!航行不能!!戦艦ザイツベルグ
消滅!戦艦グロスベルリン大破!」
オペレータから明らかに動揺した声で報告が飛ぶ。
「ば....ばかな.....そんなはずが。」
「敵の新兵器でしょうか??」「当たり前のことを聞くな。」
司令部にも明らかな動揺が走った。

<月光艦橋>
「さすが奈々だね.....敵の艦列が乱れた....今だね。」
敵の艦列の乱れは数に置いて劣勢な同盟艦隊の絶好のチャンスであった。
「全艦動力点火!砲雷撃戦開始!!」
”全動力をカットし隕石群の中に身を潜めていた大和以外の全艦艇”が帝国艦隊の”真後ろ”
から進撃を開始した。
「綾!行くわよ!」「あ〜〜隊長〜〜!!待って下さいよぉ〜」
葵も麗風で出撃しており、部下の一人志賀 綾(しが りょう)少尉に檄を飛ばしていた。


それからの戦局は奈々達にとって一方的であった。
帝国艦隊は乱れた艦列と敵艦隊に”囲まれた”という事実に動揺した兵を統制するので精一杯であった。

<大和艦橋>
「閣下...そろそろ降伏勧告を出しますか???」
「そうですね...そろそろ...」
降伏勧告を出そうとしていた奈々を遮ったのは茉莉慧の悲痛な報告であった。
「司令大変です!!岩戸要塞が敵艦隊の直接攻撃を受けています!!!」
「「「なんだって(ですって)????」」」

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あとがき
ZEEK :8話です
茉莉慧  :艦隊戦って言うほど戦いが激しくないですね
ZEEK :う゛........
茉莉慧  :描写もほとんどないし......
ZEEK :う゛う゛.........
茉莉慧  :困りましたねぇ
葵    :その割に機嫌がいいわね??
茉莉慧  :そりゃ出番が思ったよりありましたから♪
ZEEK :じ....
茉莉慧&葵:次回もやってやるぜ!!!
ZEEK :(涙)




続く?