大和の艦首より放たれた加粒子砲の光は重力レンズを経て光の奔流となって空間を突き進み突然現れた超大型戦艦を貫くかと思われた.....しかし、加粒子砲が敵艦を貫くことはなかった。
拡散モードで放たれた加粒子砲は敵艦の手前で屈折しあらぬ方向に広がっていった。
「「「なんですって!!!!!!」」」
大和の艦橋では驚愕の声があがっていた.....無理もない突如空間を割って出現するという非常識な敵艦が非常識にも粒子砲をねじ曲げたのだから。






















少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第拾話”黄泉回廊沖会戦(後編)”


<ラグナロク艦橋>
「全艦フォールドアウト終了、座標確認完了、艦に転移による被害はありません!」
「敵加粒子砲の反射に成功!ですがリフレクションシールド発生装置がオーバーヒートしました、復旧まで1時間必要です!」
オペレーターの報告が飛び交う中エドワードは不適な笑みを浮かべていた。
「どうやら間に合ったみたいだな....よし!ショックウェーブカノン発射!目標前方の敵戦艦!出力最大!撃て!」
ショックウェーブカノン、それは強力な衝撃波を発生させ敵艦を”内部から”破壊せしめる衝撃砲である。

<大和艦橋>
「結城君!放射成形炸薬弾頭の使用を許可する!全弾ぶち込め!!!」
「全弾ですか??しかしあれは.....。」
「時間がない!敵の空間衝撃波砲が来る!急げ!」
「了解です!放射成形炸薬弾頭魚雷発射!」
美瑠はZEEKの命令を復唱するとすぐに指示を出した。
「桜小路君!ジェネレーティングアーマー出力全開だ!急げ!」
「りょ...了解です!ミコちゃん急いで!」
≪了解だよ!茉莉慧お姉ちゃん≫
ジェネレーティングアーマー、ラグナロクのリイフレクションシールドと同じく物理、エネルギー、衝撃などのあらゆる攻撃を跳ね返すエネルギー障壁である、両艦に装備されている高出力の陽電子炉があって初めて展開できる為両陣営1艦づつしか装備が確認されていない超兵器の一つである。

それはほぼ同時に撃ち合いになった、大和から放たれた30発の宇宙魚雷はラグナロクの対空射撃で殆ど撃ち落とされたが5発が命中しラグナロクに甚大な被害を与えた。
そしてラグナロクの放ったショックウェーブカノンが大和に襲いかかった。

「「「「きゃ〜〜〜!!!!!!!!!!!」」」」
衝撃波は大和の強力なジェネレーティングアーマーによりその大半の威力が削
がれていたがそれでも艦橋に甚大な被害を与えていた。

「くっ...ひ...被害報告..急げ!」
zeekのかすれるような命令が上がった...しかし周りから返事がない。
周りをよく見たが全員机に突っ伏しているだけのようだ。
「気絶..か....全員起きろ!!!戦闘中だ!!」
やむ終えず茉莉慧、美瑠、恋、楠香と揺すって起こしてゆく。
「被害ほうこ.....。」
zeekはそこまで言いかけて奈々の方に駆け寄った。
「お嬢様!危ない!!!!」
奈々の真上にあった配管類が突如崩れ落ちてきたのだ....ZEEKは奈々をかばうように覆い被さり配管の落下にもろに激突した。
「「艦長!!!」」
茉莉慧と美瑠が同時に声を上げる。

<ラグナロク艦橋>
「被害報告!急げ!」
「艦首、ショックウェーブカノン全壊!フォールドシステム損傷!!、第1第2主砲、大破!、陽電子炉の出力が稼働限界レベルまで落ち込みました!」
「くっ......戦闘不能か...まさか奴らがここまでやるとは。」
エドワードは受けた被害の起き差に愕然となった...しかし自分達がまだ負けていないことも確信していた。
「殿下の艦隊がここに到達するまで持てばいい!各員敵の攻撃に備えろ!」

<大和艦橋>
配管類の落下が収まった後zeekはよろよろと立ち上がった。
「お..お嬢様...お..お怪我は..」
「大丈夫です!それよりzeekさんこそ!」
「よ...よかっった.....ひ...被害確認急げ!!!」
心配する奈々をよそにZEEKはふらつきながらも命令を続行する。
「艦長!医務室へ....」「今は戦闘中である!艦長が艦橋を離れれるものか!」美瑠の進言は遮られた。
「詩織さん!艦橋へ急いで下さい!」
茉莉慧は急いで詩織を呼んでだ。
「茉莉慧ちゃん...どうしたの??」
「艦長が怪我を...」
「わかったわ...すぐ行くわ」

「艦長!大変です!繰艦システムがダウンしています!」
「砲撃システムもダウンです!」
「レーダー反応がありません!」
「メインコンピュータとのアクセスも遮断されています!!」
「な!!!」
「第2艦橋に移ります!現地点で第1艦橋は機能破棄!結城さん、甘木さん、北林さん、急いで移って下さい!」
奈々は3人に対し移動命令を即座に行った。
「司令私は...どうしたらよいのでしょうか??」
一人命令を受けなかった茉莉慧は奈々に問いかけた。
「桜小路さん、貴女はヤサカニシステムの中枢”玄室”へ行って下さい。あそこで直接コントロールを行うのです。..これが入室キーです。」
そういうと一枚のカードを茉莉慧に手渡した。

<月光艦橋>
「大和が....沈黙した。何があったの??」
瑠璃は突然沈黙した大和の奈々を心配した...しかし自分も心配している余裕はなかったのだが。
「敵艦隊単縦陣にて突入を開始しました!」
それを聞いた瑠璃は不適に微笑んだ。
「敵さんは猪みたいですね....では敵に不用意に突入する愚かしさを教育してあげなきゃいけませんね♪.....その命を授業料に。」
瑠璃は冷徹な用兵家の顔になっていた。
「第2水雷戦隊、第16駆逐戦隊、及び艦載機隊に作戦Tを実行する用意を指令して!」

<豊川艦橋>
「大和は無事なのか?くっ...情報が欲しいところだ」
珠蓮は大和との連絡が途絶した事に焦っていた。
「親分!月光から入電!作戦Tをやるそうですぜ!」
「作戦Tか......一度やってみたかったんだ!野郎共!気合い入れていけ!」
焦っていた珠蓮ではあったが.....作戦T発動に胸を躍らせてた。

<第16駆逐戦隊旗艦”浪速”艦橋>
「指令! 作戦T発動です!」
「何!!!!くぅ〜〜〜御先祖様!貴方の偉業!この私が再び!」
司令の東郷平八大尉は感涙の涙を流していた。
「司令??....」
「ああ....すまん!作戦T発動準備にかかれ!」

<麗風 葵機>
「全機!先ほどの命令を撤回!敵艦隊が回頭しようとしたら叩きつぶすわよ!
!!」
「了解」
葵は不敵に微笑んでいた。
「隊長〜何笑ってるんですか??」
「これが笑っていられないわけ無いじゃない....楽しいのよ♪綾」
そして艦載機隊は帝国艦隊の両側から挟み撃ちをして”直進以外”の艦隊行動がとれなくなった。

<エンタープライズ艦橋>
「司令!敵艦隊が艦隊の頭を押さえるべく回頭を始めました!」
オペレーターの報告を受けたバルゼーは敵の意図を知った。
「ばかな......T字戦法だと???だが....奴らの主砲でぶち抜かれるような艦はない。かまわん!すすめ!!」

帝国艦隊は数が減ったとはいえ有力戦艦は初戦で失った艦以外全て健在であったため今だ優勢であった...もっとも巡洋艦以下の補助艦艇はすでに壊滅していたが。

<月光艦橋>
「被弾!朝霧大破!初月被弾!轟沈!」
「司令!第2水雷戦隊から入電」
オペレーターの報告が激しく飛び交う。
「つないで」「了解」
メインパネルの端に珠蓮の顔が写る
「閣下!なぜ実体弾なのでありますか!せめてエネルギー弾を使わせて下さい!」
「たとえ切り替えてもうちの艦隊の口径じゃ貫けないよ??」
「しかし!!」
「もうちょっと.....もうちょっとだけ待ってくれないかな??」
珠蓮は瑠璃に押し切られる形で了承し通信を切った。

<エンタープライズ艦橋>
「司令大変です!全ての艦艇の砲塔から通信が途絶しました!」
驚くべき報告だった.....これでは戦闘どころではない。
「ハニー君...何があったと思う????」
バルゼーは参謀長に聞いていた。
「おそらく.....実体弾のせいでしょう。」
「なぜだ??貫通もできない脆弱な奴らの弾で??」
ハニーに続きアール艦長が答えた。
「そう....実体弾だからこそなのです、装甲に砲弾が当たる音は気持ちのいい物ではありませんからな...たぶん各砲塔の砲手は気絶もしくは発狂したのでしょう。」
「何たることだ.....。」
「殿下から入電!帰還せよ....どういたしましょうか??」

司令部に沈痛な雰囲気が流れた......。
「やむおえん......撤退だ!」

そう.....戦いは終わったわけではなかった。
帝国第1艦隊が敗退してもまだすぐ近くに近衛艦隊が居るのだから。

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あとがき
ZEEK :10話です
茉莉慧  :大台に乗りましたね〜
ZEEK :しかし...後編で戦いがおわらんかった..どうしよう
茉莉慧  :能力不足ですね♪
ZEEK :う゛.........
茉莉慧  :困りましたねぇ
ZEEK :...............
茉莉慧  :なんか次回もまだ続くみたいです(苦笑)
ZEEK :次回もやってやるぜ!!!






続く?