<飛鳥皇国首都星・アマテラス>
「急げ!目指すは統合作戦本部と宰相府だ!」
若く力強い怒声が飛び交い、中央に座る若手士官は落着かないような風で報告を待っている。
『こちら統合作戦本部、山本本部長、石原参謀長の身柄を確保!』
『こちら宰相府、近衛宰相、及び桜小路法務相の身柄を確保!』
『こちら宮城!占拠を完了!陛下の玉体を無事確保!』
ほぼ当初の予定を達成したクーデター軍はようやく落ち着きをとり戻した。
「おめでとうございます!大佐!」
「ありがとう、諸君らのおかげた!しかしこれからが大変だぞ!折衝や・・・・何より岩戸要塞の連中と事を構えねばならん・・・・・・・。」
「大丈夫です!我々に志しある限り負けはしません!!!」
「それに・・・彼らがいます!!!」
若手士官の決起によるクーデター勃発は奇しくも2月26日のことであった。

























少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第拾八話”2・26事件”


<アマテラス軌道防衛ステーション>
「みんな!岩戸要塞に移動するわ!全端末のシステムロックをかけて頂戴!下(本星)が占領された以上・・・ここにいたら危険よ!」
優恵の激が飛ぶ。
軌道防衛ステーションは交代要員を含めて16名の人員で構成されている。
艦隊等を配下に持ってはいるが軌道防衛艦隊自体が自動艦隊であり、先の朝鮮艦隊との戦いで全て失われた為,クーデター軍の艦隊がきたらひとたまりもないだろうことは全員が理解していた。
そう・・・・クーデター軍が宮城を押さえたということは、今異端分子とされるのは間違いなく自分たちなのだから。

『防衛システムロックをかけました、自動防衛システムを1時間後に作動させます。解除にはパスワードが必要です。』

コンピューターアナウンスがステーション内に響く、自動防衛システムとは射程内に入った全ての宇宙船に警告を発し返信時にパスワードを入力するか反転しない限り攻撃をするというものであった。
防衛ステーションの主武装は反射衛星砲である。(反射衛星砲は普段はマイクロウェーブ転送機として利用されているため地上設備の破壊は不可能)
「司令!連絡艇へ移りましょう!」
「わかったわ!行きましょう!岩戸要塞へ!」

<アマテラス・軍務局>
「大佐!軌道防衛ステーションが自動防衛モードに入るそうです!」
大尉の階級章をつけた男がノックも無しに部屋に入ってきた。
「・・・・・・・・ある意味好都合だな・・・・ハッキングは可能か??」
煙草で一服をしていた男は大尉の方を見ると必要事項の質問をする。
「すぐにはなんとも・・・必ず何とかして見せます!!!」
「頼むぞ・・・奈々が来る前に何としても押さえるんだ!」
「了解しました!」
部下が部屋からかけだして行くのを見て大佐の階級章をつけた男はひとりごちた。
「もっとも.....奈々はここにこれるかどうか....くくくくっ」
最初忍び笑いだった大佐の笑い声は大きく部屋にこだました。

<岩戸要塞内・帝国軍近衛艦隊旗艦ベルシュフィーネ艦橋>
和平式典と調印等事務処理があらかた終了したためベルシュフィーネは
出航の準備を始めていた。
「今後どう動くか情勢がわからん・・・出航準備一つとっても慎重にやれよ!」
艦長のフェサルーン中佐は現在多忙を極めていた。出航前の艦長の事務処理量は半端ではないのだ。
「フェサさん!手伝いにきましたよ♪」
艦橋の入り口からクリーム少尉がひょっこり顔を出しながら脳天気に言うとフェサルーン艦長は顔をしかめて返事を返すしかなかった。
「やめとく....おまえが手伝うと余計仕事が増えそうだ」
「ひど〜〜い」
いきなり始まった夫婦喧嘩(クリーム「ちがいます!!!!」)に艦橋内に忍び笑いが蔓延する....
「だったら.........」
フェサルーン艦長の返事が終了することはなかった。
急に艦全体が揺れると同時に艦橋のすぐ外に火柱があがった。
「.......やばいな.....主機関完全閉鎖!総員退艦!繰り返す!主機関完全閉鎖!総員退艦!」
フェサルーン艦長は艦の爆発が尋常でないのを悟り伝声管に飛びつくと急ぎ退艦命令を出した。(何人脱出できるかな........。)
「フェサさん.........」
クリーム少尉が心配そうにフェサルーン艦長を覗き見ていた。
「クリーム!!まだ残ってたのか!すぐに退艦だ!急げ!!」
フェサルーン艦長はクリーム少尉の腕を掴むとすでに2人だけとなった艦橋を飛び出した。
「フェサさん..痛いです!!」
走り始めてどれくらいたったろう....艦外に脱出した二人の最初の会話がこれである。
「す..すまん!...だがまだ安全圏ではない!!急ぐぞ!!!」
そういうと二人は上甲板から飛び降りた.....といっても桟橋内は低重力の為地上20Mからの飛び降りとはいえ決して危険なモノではない。
地上に降りると二人は急ぎ最寄りの避難所に駆け込んだ時....帝国近衛艦隊旗艦ベルシュフィーネは2年の生涯を閉じた....爆沈であった。
間一髪、難を逃れた二人は上官であるクレアに連絡を取った。
『フェサルーンさん..どう言うことですか??』
「申し訳有りません殿下.......旗艦を失ってしまいました...どうやら第1砲塔の弾薬庫に爆薬を仕込まれたようです....弾薬庫の誘爆によりベルシュフィーネは爆沈.....覚悟は出来ております。殿下のご裁可を。」
頭を垂れるフェサルーン艦長にクレアは優しげな微笑みを向けるとともに切り出した。
『それには及びません、飛鳥皇国でクーデターが起こったようです、ベルシュフィーネ爆沈も先のウォン朝鮮明国少将の暗躍の残り火かもしれません。ともかく私の所まで来て下さい、事態は急変しているようです。』
「「了解しました」」
部屋を移動しようとしたときであった「いたっ」...とクリーム少尉が急にしゃがみ込んだ
「どうしたんだ?」「足を....捻ったみたいです..。」
フェサルーン艦長はやれやれと肩をすくめるとクリーム少尉を抱き上げた....いわゆるお姫様だっこと言う奴である。

「フェ.....フェサさん!!!」
「仕方ないから俺が運んでやる......あとで...軍医に診てもらえ」
「.....はい」
二人とも真っ赤な顔のまま部屋を出た......が
「あら♪......まぁ♪.......どうしましょ♪」
通信室を出たところでシノマ一等書記官にばったり出くわしてしまった。
「書記官殿....これは......あの.....。」
「そうです!!これは仕方ないことなんです!!!」
二人がしどろもどろに言い訳する中、シノマはクスッと笑い
「式の日取り....決まりましたら教えて下さいましね?」
と言うとシノマは自爆している二人を置いて先にクレアの元に向かうのであった。
余談ではあるが後で茉莉慧や葵にも同じように言われその都度自爆する二人であった(もちろん茉莉慧は本気で、葵はからかいでである...)。

<岩戸要塞司令室>
司令室では稀代の女用兵家二人がお茶を飲みつつ現状を討議していた。
「........奈々さん、どう思います?」
自然なそれでいて優雅にお茶を飲みながらクレアが切り出した。
「十中八九...クーデター側の工作でしょうね。多分要塞内宇宙港の混乱を利用して要塞内のクーデター勢力の脱出...もしくはその逆の工作を行ったと思って良いでしょうね。...近衛さんお掃除..お願いできるかしら??それから、巡洋艦以上の全ての艦艇の武器弾薬、エンジン部の総チェックを行うよう伝達して下さいね」
『了解しました!』モニターに写っていた葵に指示を出すと葵は敬礼とともに画面から消えた。
「定石ならそろそろ次の手を打ってくる頃だけど....クレアさん..貴女ならどうします??」
奈々とクレアの会話は続く......それはお茶会の雑談のようにさらりと続いていた故に周りにその重大さが伝わらなかったかもしれない。
だからクレアの発言と未確認艦隊出現の報が同時にやってきた時、周りは始めてことの重大さを理解した。
「そうですね....私ならそろそろ艦隊で攻撃する頃ですね....もっともあちらに艦隊が有れば...あるみたいですね」


そして謎の艦隊は要塞近くに布陣を敷いた。



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あとがき
ZEEK :18話です
茉莉慧  :17話から更にずいぶん時間がかかりましたね
ZEEK :う゛
茉莉慧  :コミケで頑張りましたものね....
ZEEK :まぁね
茉莉慧  :なんか今回フェサさんが妙にかっこいいのですが...
ZEEK :ちょっとね.......帝国側の皆さんに少しスポットを浴びせてみたのよ
茉莉慧  :で.......私達は??
ZEEK :ふあっはっはっはっは!明智君!また会おう
茉莉慧  :誰が明智君なんですか!!
ZEEK :ってことで次回もやってやるぜ!!!(シュタッ)






続く?