<岩戸要塞司令室>
「黒い見慣れない....艦型ですわね。」
「ええ....連合型でも帝国型でもありませんね。」
奈々とクレアは相変わらずお茶をしながら討議していた。
『閣下!各艦の確認が終わりました。大和以外の戦艦には全て回路が仕組まれています。主砲動力回路に電力が通電すると爆発する仕組みになっております。取り外すのは簡単なのですが.....その場合主砲制御回路を交換せねばならず出撃に間に合いそうもありません。駆逐艦以下の艦艇なら出撃可能ですが戦艦が大和だけとなると...あと爆発直後に高速連絡艇が出航したのを入出港記録より見つけました。どうやらスパイ達は脱出した模様です』
葵の連絡に奈々は渋い顔をすると。
「脱出は囮かもしれませんから引き続き調査を部下に続行させ貴女は戻ってきて下さい、出撃です。」
『了解しました。』
そのときである。
「あの...フェサルーン艦長さんってクリームさんとそう言う中だったんですね。私ちっとも知りませんでした。」
茉莉慧の場にそぐわぬ会話に奈々とクレアが見たモノは.....顔を真っ赤にしてクリーム少尉をお姫様だっこしたフェサルーン中佐の姿だった。


























少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第拾九話”大和出撃”


<アマテラス軌道防衛ステーション高速連絡艇>
防衛ステーションを脱出した優恵達ははやくも黄泉回廊の入り口に到達しようとしていた。
「大佐...まもなく黄泉回廊です。」
「さすがに高速連絡艇ね.....普通なら五日はかかる行程を二四時間でこなすなんて」
感心する優恵に部下が報告を入れた.....かなりやばい報告を.....
「とは言ってられないみたいですよ.....向こうもやばそうです...要塞の周りに国籍不明の艦隊が陣取ってます。」
「このまま囲いを突破できそう?」
「突破したら....クロスファイアポイントに突入することになりますね。」
「そっか.....万事休すね....残りの燃料は??」
優恵の問いに操舵手は肩をすくめた....。
「そう.....敵に見つからないように徐々に速度を落として..隕石群に紛れて。...でもそんな長くは待たないと思うわ..大丈夫よ。」

<岩戸要塞司令室>
「フェサさん....貴方に頼みがあります。....亜細亜連盟第七艦隊に出向してくれませんか?そして...クリーム....貴女もよ。」
とりあえず落ち着いたフェサルーン中佐にクレアはこれからの話をしていた。
「殿下.....それは一体。」
あまりに急なそして前例のない命令にフェサルーン中佐は驚き問い返していた。
「それは..私から説明します」
クレアの横に立っていた奈々がゆっくり...諭すように話し始めた。
「フェサルーン中佐...ラグナロクのムラクモシステムの特殊性は..御存知ですね?」
「はい...」
「そのほぼ同型の制御システムを大和は有しています...もっともヤサカニシステムといいますが..。」
「え??」
フェサルーン中佐は驚いた...大和も発掘戦艦だというのだ。(無論この情報は帝国側に知られていなかった)
「そして...クリームさん..。」
「........はい」
「大和中枢の玄室システムはラグナロクとも繋がっています。..この意味..解りますね?」
「いいえ......」
クリームの顔色がだんだん青ざめていく。
「経験不足のヤサカニシステムと違いムラクモシステムならクリームさん..貴女一人でラグナロクをコントロールする事が出来るのです。」
「でも!!!!私は!!!」
そのとき茉莉慧がクリームの方にそっと手をおいた。
「クリームさん......鈴ちゃんはきっと答えてくれますよ。」
「私にそんな資格なんて......私鈴ちゃんの心を守れなかった....。」
「でも.....鈴ちゃんは待ってるんじゃないんですか?.....貴女を」
クリームと茉莉慧の問答は続く.....。
「私....取り返しの付かないことをしちゃったんですよ?」
「これから返して行けばいいじゃないですか。.....私が貴女の立場でも....きっと同じになったと思います。でも重要なのは過去がどうではなくこれからじゃないのかしら?」
「そうよ....桜小路さんの言う通りよ...クリーム」
クレアが茉莉慧の後を引き継ぐ....。
「殿下......」
「貴女があの事件以来 無理をしているのはずっと知っていました。そろそろ我慢しなくても良いのじゃないかしら。」
「私....私..私.....。」
ふさぁ....いたたまれなくなったフェサルーン中佐はクリーム少尉を優しく抱きしめていた。
.....そしてクリーム少尉は堰を切ったように泣き出した。

<大和医療室>
「詩織君.....次元通信システムは復旧したのか?」
ZEEKが病床を押して作戦準備に取りかかっていた(それゆえに病状が悪化して長引いているという噂も)
「大丈夫ですわ.....後は攪乱プログラムですけど...美華ちゃん??」
端末から振り返り..詩織が答える....その向こう側では神速ともいえる早さで美華が猛烈な入力作業をしていた。
カタカタカタカタ...カタ。
「先輩!今終わりました!!」
「では玄室システムの再調しに行って参りますわ。」
「頼む.....。」
「美華ちゃん、行きますわよ?」
「せんぱ〜〜い!!待って下さい〜〜〜」
颯爽と詩織が医務室を出て行くのをトテトテと行った趣で美華が付いて行く..良いコンビである。
「あの二人で....大丈夫だろうか....」
一人部屋に残ったZEEKは成り行きに不安を感じていた。

<黒色艦隊旗艦艦橋>
「では諸君.....そろそろ本番にうつるとしよう。」
旗艦艦橋の中央の司令官が作戦の開始を告げていた。
「要塞に降伏勧告の通信を入れてくれたまえ。まぁ...彼らのことだ無駄なあがきをするかもしれないがね。」

<大和艦橋>
奈々はフェサルーン中佐と茉莉慧をつれ大和艦橋に入った。
「奈々...遅いよ...」
そこには司令官席に座る和仁皇太子と傍らに立つ歌織であった。
和仁は宇宙軍中将の軍服、歌織は宇宙軍少尉の軍服とカツラと眼鏡と言ったいでたちであった。
「殿下.....要塞司令室にて指揮をお取り下さい。この艦は危険宙行きに突入します。」
「負けるつもりは....無いんでしょ?」
奈々がいさめようとするが和仁の切り返しに奈々は引き下がるしかなかった。
「どうなっても知りませんよ?」
「奈々を信頼してるから」
和仁の微笑み攻撃に艦橋は沈黙した・・・・。
「閣下..よろしいですか?」
沈黙を破ったのは男性故に影響を受けなかったフェサルーン中佐だった。
「総員出向準備!及び戦闘準備!出撃と同時に過粒子砲を拡散モードで掃射!...あと気流信号に皇族旗を掲げろ!」
フェサルーン中佐の命令一過艦橋内があわただしく動き始めた。
「艦長代理...皇族旗ではなく天皇旗を掲げて」
「はぁ?天皇旗......でありますか??」
突然の和仁の言葉にフェサルーン中佐は聞き返した。
「飛鳥がアマテラスからの特殊コードを受信した....臨時ではあるけどね現在は皇太子ではなく天皇代理さ。」
「はっ!天皇旗を掲げろ!」
余談ではあるが出撃する大和に天皇旗が掲げられたことにより要塞内の志気が上がったのは言うまでもない。

「クリームさん..大丈夫ですか?」
『茉莉慧さん、さっきは有り難うございます、もう...大丈夫です』
茉莉慧は玄室システムに付いたクリーム少尉に通信で話しかけた。
「頑張って下さい!私本当に応援してますから!」
≪私も応援してるよ!きっと鈴さんも答えてくれるよ♪ね?クリームお姉ちゃん≫「ミコちゃんも有り難う!私頑張る!」

その時奈々の命令が艦橋に響いた。
「大和出撃!」

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あとがき
ZEEK :19話です
茉莉慧  :なんか一部私が私じゃないみたいですね
ZEEK :ふっ.....それはまた後ではなすさ
茉莉慧  :まぁいいんですけど......
ZEEK :ふふふ
茉莉慧  :なんか今回もフェサさんが妙にかっこいいのですが...
ZEEK :鈴ちゃんをそろそろ復活させるに当たってエピソードを作らねばならなかったのよ(苦笑)
茉莉慧  :で.......私達は??
ZEEK :ふあっはっはっはっは!金田一君!また会おう
茉莉慧  :誰が金田一なんですか!!2回もやったらネタがつきますよ!!
ZEEK :ってことで次回もやってやるぜ!!!(シュタッ)






続く?