<ラグナロク メインコントロール システム>
鈴は目の前に居る見知らぬ女性と対峙していた。蒼い髪に紫の手袋.そしてコウモリの羽を持った大人の女性..
それはまるで成人した鈴のような姿であった。
「貴女...誰?」
「私はヴァルムング....あなたが居なくなった後に創り出された仮初めの制御システム。」
ヴァルムングと名乗る女性は話を続けた。
「鈴..あなたが帰ってきたなら私は消えなくてはならないわ..。私は貴方の影でしかないのだから。」
「えっ?」
鈴は混乱した.目の前の女性は自分の影だという....ということは自分が成長したらもしや...。
「でも......貴方は私を受け入れることができる??...わたしは貴方より多くの人を殺したわ。」
悲しげなほほえみを浮かべながらヴァルムングは鈴に問いかけていた。
「私...私はもう後悔しない!クリームお姉ちゃんと約束したから!!」

力強い鈴の答えにヴァルムングは優しく微笑み囁いた”おかえりなさい”と....。



































少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第弐拾弐話 "要塞防衛戦(後編)"

<軌道防衛ステーション高速連絡艇>

優恵は連絡艇内で激しい後悔にさいなまれていた。
「まさか.....私たちが足を引っ張ってしまうなんてね。」
「まさか回廊内に敵性艦艇が展開しているなんて予想されなかった事態です!不可抗力ですよ?」
北村の言葉はほかの全員の気持ちを代弁していた。
「ごめんなさい..みんな。」
「大丈夫です.....こっちには聯合最強の”守護天使”が居るんですから...っとでも今は陣の反対側にるんでしたっけ」
北村の発言に全員が明るい雰囲気に変わった。
「そうね...まぁなるようになるしかならないわね....気楽に待ちましょ」
そういうと奈々の艦隊が展開して居るであろう方向を見つめると優恵は一人つぶやいた。
「頼んだわよ...奈々」

<大和第一艦橋>
「..........以上が本作戦の要項です。」
ZEEKの作戦説明は敵艦隊の予想行動まで視野に入れた緻密なものであった。
「ZEEK少佐.....作戦は判りました..しかし『問題ありませんわ!こんな事もあろうかと!私が密かに開発しておいた”瞬間物質移送機”ですべて解決ですわ!!!』」
フェサルーン中佐の懸念を突然通信に割り込んできた詩織によって解決してしまった...しかしこんな事もあろうかとと説明している詩織の後ろに炎の壁が見えたのは気のせいであろうか??
すべての問題はクリアされた...和仁親王の方を見ると黙って頷き返してくる。
(やるしか......ないか)
フェサルーン中佐はしかるべき命令を下した。
「作戦..開始」

<大和格納庫内>

葵はコクピットで発進の時を待っていた。
「隊長.......生き残れますよね??」
綾が心配そうに葵に語りかけてきた。
「この困難なミッションをクリアできるのは私の”ブルーサンダース”以外にはあり得ないわ...綾...らしくないわよ??」
「でも.......」
「.......もしかして詩織の発明品が怖いの??」
「........はい」
「大丈夫よ......こんな時に詩織が私の期待を裏切った事なんてないのよ...賭けてもいいわ♪」
「!!!......はい!!!」
「そろそろ発進よ....全員気を引き締めないさい!物質転送時の衝撃で気絶なんてしたら..」
「「「「「したら??」」」」」
「猛特訓よ!!」
全員が爆笑した.....それを確認しながら葵は作戦の成功を確信していた。


<黒色艦隊旗艦”ニーベルング”>
ブリュンヒルトは苛ついていた....こちらは圧倒的に有利な上に人質まで取ったのだ....では敵艦隊のあの士気の高さはどうなのだ??
珠蓮率いる水雷戦隊は回廊の外.アステロイドベルト群からおもむろに飛び出しヒットアンドウェイを繰り返し..その被害も馬鹿にはできないで居た。
目の前の大和も.主砲こそ発砲してこないものの依然仰角をもたげこちらをねらってきている....そう..相手には降伏する意志など無いかに見える。
「時間........ね.通信回線を開きなさい!」
それでもブリュンヒルトは相手をくみ伏す手を考え始めていた。
スクリーンには少年が映し出される。
「先ほどの艦長とは違うようだが....貴殿は??」
「私は飛鳥皇国皇太子の和仁です...貴艦隊の要求は受け入れることはできません...従って連絡艇は独力で回収させていただきます。」
そういうと和仁はにっこりと微笑んだ。
「くっ.....どうやって「大変です!!連絡艇付近に突如モビルトレーパーが出現しました。」」
「では、もう会う事も無いと思いますがお元気で....」
通信が切れたとき二度目の変化がおこった...。
連絡艇とMTが居たあたりの空間が歪むと”数隻の味方艦を巻き込んで”消え.代わりに”大型艦”が出現したのだ。
「な......あれは”ラグナロク”..まずい!!!全艦回避!!!!!!!」

<大和第一艦橋>
事態の推移を見たフェサルーン中佐はにやりと笑うと常に開いていたクリームとの回線に向かって命令した。
「クリーム!絶好のチャンスだ!」『了解!鈴ちゃん!いくよ!全弾掃射(フルバースト)!!!!』
フルバースト....それは空間転移能力を持つラグナロクが”敵艦隊の真ん中”に転移した後無数に存在する砲、ミサイルを”無照準”で発射する攻撃方法である。
突如艦隊中央に出現した超大型艦がありったけの弾薬をばらまくのである...敵艦隊からすればたまったものではない...しばらく後黒色艦隊はその大半を失っていた。
「艦長代理....要塞司令部より入電です」
戦いの帰趨が決した後フェサルーン中佐は茉莉慧からの電文を受け取っていた。
連絡艇とブルーサンダースは帝国艦隊に無事保護された事..そして転移後敵艦は突如動力を停止し全艦拿捕に成功したこと....ひとまずこれで終わりだな。
「敵艦隊..撤退を開始しまし.....待ってください黒色艦隊第二陣が回廊聯合側出口より侵入してきます!」
『心配には及びません.....』
楠香の悲痛な報告を遮るかのように奈々が通信ウィンドゥに現れた。
楠香は第二陣のさらに後ろに味方”上条艦隊”を確認した。

あとはまさに殲滅戦であった.....袋叩きにあった黒色艦隊はその大半を失いつつ撤退していった。

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あとがき
ZEEK :弐拾弐話です
茉莉慧  :あれだけ引っ張ったのに....あっけないですね
ZEEK :ふっ.............
葵    :少佐!ここにいたのね!
ZEEK :げ.......葵君...........
茉莉慧  :せっかくの戦闘シーンをラグナロクにとられちゃいましたものね
ZEEK :しかたないやん......安全策をとったんだから
葵    :問答無用.....よ
ZEEK :やべ.......(脱出)
詩織   :.....少佐に何の恨みもありませんけれど(ぷす)
ZEEK :きゅ〜〜〜
葵    :詩織......その注射器どこから出したの??
詩織   :乙女の秘密ですわ♪




続く?