<第4艦隊旗艦”陸奥”司令長官室>
「奈々君......」
ディープ竹崎中将は悩んでいた。敵対する奈々は敬愛する先輩である故霧島元帥の娘であり。
自らも娘のようにかわいがり後見人として過ごしてきたからである。
ピッ
『司令長官閣下、そろそろ作戦宙域です、艦橋にお戻り下さい。』
「わかった....すぐ行く。」
副官からの呼び出し連絡に竹崎中将は腹をくくった。”まぁなるようになんとかなるだろう”と..


































少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第弐拾六話”作戦名≪幻炎≫” 


<”陸奥”宙戦艦橋>
竹崎中将が艦橋に入ると慌ただしく動き回っていた艦橋要員はさっと静かになる。
「どうした?」
「はっ....海峡封鎖です.....前方約5万宇宙キロに大規模な宇宙機雷群を確認しました。」
.....竹崎中将は思案した....敵将は奈々はこんなあからさまな手を打ってくるような人物ではない。
仮に機雷封鎖するなら気が付いたときには自分たちは嫌いのまっただ中になっているはずだ....。
「なにか.....あるな。....しばらくこの場で待機!」

<大和艦橋>
戦況ボードに竹崎艦隊の停滞したのが表示された。
「ふふっ....さすがの竹崎提督も戸惑っているようですね。」
「はい....閣下の作戦にしては見え透いた手に見えますからね」
奈々はキャプテンシートに腰掛けながらクスリと笑いながらZEEKに語りかける。
「では作戦を第2段階に.....そして頃合いを見て第3段階に移します」
「果たしてうまくいくのでしょうか??」
「なにしおう竹崎提督ですからね.大丈夫でしょう」
Zeekの問いかけに奈々はにこやかに応えた。

<”陸奥”宙戦艦橋>
「提督!機雷群がこちらに向けて移動を開始しました。」
「何だと?」
常識的に言って機雷がよってくると言うことは考えられない。となると相手側の新兵器か.....まずいな。
そのままよってくるかと思っていた機雷群は突如割れ回廊を造りだした。まるで通って下さいと言わんばかりに。

どうする?.....ここまでの作戦があまりに見え透いている.見え透きすぎている....一体どういうことなんだ!!!

結果として竹崎艦隊の運命はこの時決まったといえる。
思考の海に沈んだ竹崎提督を呼び戻したのはレーダー手の悲鳴であった。
「宇宙魚雷多数!本艦隊に向け急速接近中!!!!」
「迎撃せよ!全兵装使用承認!(オールウエポンフリー)全艦回避運動開始!(レッツダンス!)」
「イエッサー!オールウェポンフリー!レッツダンス!」
第4艦隊は竹崎提督の命令一下迎撃の為に砲弾を狂ったように吐き出し始めた。
「弾着まであと3.2..え?宇宙魚雷爆散!」

主砲弾が宇宙魚雷群の先端に到着しようとしたその矢先宇宙魚雷群は突如爆散し・・破片をまき散らした。宇宙魚雷攻撃は無駄に終わったのか?否それが変化の始まりだったのだ。
主砲弾が宇宙魚雷爆散宙域に到達したときとんでもない爆発が起こりたちまちモニターが白一色で埋め尽くされる。
「は......反物質兵器だと??」誰しも核兵器だと思っていた中
奈々の兵装実験につきあって反物質兵器を見たことのある竹崎は敵の兵器が何であるか知った・・・いや知らされたと言うべきであろう。
その見知らぬ新兵器はあっという間に拡散すると艦隊を覆い尽くすかのように広がり始めた。
「い・・いかん!」

<大和艦橋>
「お見事....」
奈々は艦橋で呟いた・・・。
「石原さん、機動機雷”ホクサス”の調子はいかがですか??」
「まもなく敵.いえ第4艦隊を取り囲みますわ...茉莉慧ちゃん第三段階開始、最優先事項よ♪」
奈々の問に詩織は自信いっぱいに答えた。
「了解!......ミコちゃん.....判ってるわね?」
《勿論だよ♪茉莉慧お姉ちゃん♪やっつけちゃいけないんだよね??それで囲んじゃえばいいんだよね?》
「ええ....それでいいのよ」
《ホクサスちゃん達!いっけ〜〜〜♪》
ミコの操るマザーホクサスよりビットホクサスが射出され各々の制御下で活動を開始する.....その光景はまるで魂のきらめきのようであった。

「しかし...艦長......なぜ前面からだけなのですか??」
一息ついたのか茉莉慧の突然の問いにZEEKは少し考えたあとこう答えた。
「艦隊というものの特性ゆえ....だよ.....艦隊は真横や真後ろに進むように出来ていないからね......確かに単艦ではそれも可能だ....しかし艦隊という群体になった時....個々の艦を全く違うベクトルで動かすことは....自殺行為になるからだよ。」
「なるほど.....だから旧世紀の”T字戦法”がいまだ有効な所以なんですね?」
「その通りだ..桜小路君.......それでホクサスの進行状況はどうかね?」
ZEEKは満足そうに優秀な生徒(茉莉慧)の答えに満足すると任務を促した。
「はい・・・全く持って予定通りです。あと......5分ほどで対象の包囲が完了します。」

<”陸奥”宙戦艦橋>
「囲まれました.....完全に・・・・敵の新兵器は我が艦隊の周りを周回しております」
「全艦停止!動くな!!!」
竹崎提督の突拍子もない命令に艦橋がざわめく
「し・・・しかし」
「我々の負けだよ....見たまえ....周り一面敵の兵器だらけじゃないか。..それに奈々君なら我々を全滅させるのを良しとはしないだろう」
「.......そうですね....死んだら花身も咲きませんからね。」
司令官の影響か艦隊はやはりスーダラ節であった。





<6時間前、大和作戦会議室>
「こんな事も有ろうかと用意しておきましたわ!その名も機動機雷”ホクサス”それと磁気機雷”バーストン”そして偽装機雷”ミラージュ”」
詩織の迫力に作戦会議に参加した全員がたじたじであった。
「ホクサスは文字通り可動機雷ですわ1基のマザー機雷で16基のビット機雷を制御し機雷を目標に対し体当たりを敢行させますの。そして1基あたりの大きさも小さく迎撃を困難にするんですのよ。バーストンは磁気制御型機雷でこちらの命令信号なしには起爆しない仕組みになってますの...そしてミラージュは擬似的に機雷が存在するかのように見せかける事の出来る装置ですわ。」
「私の提案する作戦案はバーストン、ミラージュを用いて海峡封鎖を行い、敵を惑わせ、しかるべき後にホクサスで敵艦隊を包囲降伏勧告を行うものです。また一部のホクサスに反物質燃料を搭載し、第4艦隊の被害がでない位置でわざと一部を爆破し敵にその威力を見せつける事も考えております」
詩織の説明をZEEKが引き継ぎ作戦案を提案する。
「なるほど、幻の機雷群や反物質機雷に敵を引きつける訳か。」
珠蓮少佐がポンと手を叩きつつ納得する。
「その通りです、本作戦を”幻炎”と呼称します。」
「ZEEK少佐の作戦を是とします....zeek少佐30分以内に詳細な作戦要項をまとめて下さい。石原博士は機雷群の準備を.....「もう既に準備は済んでおります、司令の御命令が有ればいつでも発動可能です。」」
奈々の指示が終わる前にZeekは報告と共にニヤリと笑った。


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あとがき
ZEEK :弐拾六話です
茉莉慧  :機雷が新兵器なんですか??
葵    :なんだか星●軍の兵器そのままよね(苦笑)
茉莉慧  :詩織さんがどんどん危ない人になってきますぅ
詩織   :危ないのは少佐一人で充分ですわ
ZEEK :ぐっ...........
茉莉慧  :しかし.....強引にやっちゃいましたね(苦笑)
ZEEK :いいんだいいんだ.....おれなんて......やってやるぜ!!(ハーリーダッシュ)
葵    :あら......ちょっといじめすぎたかしら?




続く?