<大和 葵の私室>
コンコン
『葵姉さん?居るんでしょ?』
合流した竹崎艦隊を麾下に加え大和を旗艦とする反乱軍鎮圧艦隊は惑星アマテラスまで後1日の距離の所まで来ていた。
そんななか茉莉慧はずっとふさぎ込んでいる葵の部屋を訪れていた。
「茉莉慧・・・・・」
葵の有様は酷い状態であった、茉莉慧はその葵らしからぬ有様に一瞬言葉を失うが意を決したように話し始めた。
「葵姉さん.....実は......」
少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第弐拾八話”決戦前夜”
<アマテラス防空司令部>
「司令・・・全部隊展開終了いたしました。」
「そうか......どうかしたのか?」
悠華の報告を窓の外の月を眺めつつ受けた公人はじっと見つめてくる悠華に聞き返した。
「葵のことです.....」
「君もしつこいな....そういう君はどうなのだい?澪君..といったかな...陛下と共に宮中に幽閉されてるんだろ?」
「澪は.......澪は覚悟できているはずです。」
「だったら葵も同じだろ?」「違うんです.....」「違う?」
「女は...愛する人と刃を交えることが出来るほど器用に生きられないんです。」
「葵は......違うと思うんだがな........。」
(鈍い人.....本当に...本当に何も判ってない.....たぶん今頃葵は....)悠華はそっと溜息をついた。
<大和格納庫>
飛鈴は不在の葵に代わり明日の出撃の準備の総指揮を執っていた。
「はぁ......先輩が居ないとだめね・・・・・。」
「隊長〜〜そんなこと言わないで下さいよ〜〜」
「そうです飛鈴中尉....相手があのアマテラス軌道防空軍だって思うときが滅入っちゃうんですから。」
飛鈴のぼやきに美都里と綾のツッコミがすかさず入る。
「とはいえ・・・先輩と違って大規模な空戦指揮なんか執ったこと無いわよ...って先輩!!」
「隊長!......どうしたんですか?その髪」
「近衛隊長!良いんですか??」
「ありがとう...もう・・大丈夫よ!」
格納庫に突然現れた葵に部下達が集まる・・・が・・・絶句していた。
葵は長い黒髪をばっさり切ってしまっていた。
「みんな...ありがとう....そうよね...私がうじうじして・・・貴女達を靖国へ送るなんて訳にはいかないわ。私は指揮官なんだから...貴女達を一人でも多く生きて返してあげることが私の使命だから。」
「だからみんな....明日は勝わよ!」
「「「「「了解!!!!」」」」」
<1時間前 葵の私室>
「茉莉慧...話って??」
いつになく真剣な茉莉慧の表情に葵は先を促した。
「はい・・・・義兄さんの事なんですが。」「公人の?」「ええ」
「義兄さん.....マインドコントロールを受けてるらしいんです。」
「ちょ・・・・ちょっとまってよ!公人がマインドコントロールなんて...」
「葵姉さん.....岩戸要塞を襲った黒い艦隊.....彼らがなんて名乗ったか.覚えてますか??」
気持ちの切り替えが付いたのか一気に顔に精気が戻る。
「確か・・・”新第三帝国”.....第三帝国?.....まさかネオナチ?」
「いえ.....どうやら本家の生き残りみたいです。」
「で・・・・その新第三帝国とやらが今回の事件の黒幕って訳ね」
「ええ.....」
「公人ほどの男がかけられたマインドコントロールか.....。」
「はい.....たぶん義兄さんは本気で私たちを殺しに来ます。」
「あいつの手に掛かって死ぬなら....本望なんだけどな。」
「葵姉さん!!!!」葵の自嘲に茉莉慧はきつくたしなめる。
「ごめん.....そうね私はともかく部下達を死なせるわけには行かないわね....」
葵はそう呟くと自分の軍刀を引き抜くと髪をばっさりと落とした。
「葵姉さん!!」茉莉慧が驚くと葵は逆にさっぱりとした表情で諭すように言った。
「茉莉慧の髪が切れたわけじゃないわ.....それに吹っ切れたし...じゃあ..格納庫に行って来るわ。」
「葵姉さん........。」
葵は簡単に身支度を整えると格納庫へ向かった。
<大和艦長室>
艦長室ではZeekと詩織がお茶を飲みながら話をしていた。
「葵に・・ある程度真実が行くようにそれとなく茉莉慧ちゃんに情報を流しておきました。」
「手間を掛けるな....まさかあのあいつが洗脳されるとはな。」
「仕方有りませんわ....あの黒い艦隊は連盟、帝国共に根深くその毒牙を絡ませていたようですわ。」
「すまんが手はず通りに頼む.....明日は艦橋を離れるわけには行かないから前回のようにはいかんからな。」
「安んじてわたくしにお任せ下さいな・・少佐」
「頼む.....詩織君」
ニッコリ微笑む詩織にZeekは静かに頷くのであった。
<大和司令長官公室>
「.............Zeekさんまた何か企んでますね。....少しは私にも相談して欲しいものです....今回も容認しかないかしら?」
『これで良いの?奈々お姉ちゃん』
「ええ・・・ありがとうミコちゃん」
『でものぞきなんて趣味が良くないよ?』
「近衛さんが髪を切ったって言うじゃないですか...髪って女の命なのですよ?....何を企んだのか司令官として知っておく必要があります。」
『そういうものなのかな?』
「そういうものですよ?...さてっと....明日の艦隊運動及び作戦案を36通り作って置かなくては....ミコちゃん後少しだけ協力してくださいね」
『何だかそっちの方が大変そうな気がするよ・・・・』
「気のせいですよ」
=================================
あとがき
茉莉慧 :弐拾八話です
葵 :少佐は???
詩織 :また逃げましたわ...おき手紙を残して.
葵 :何々....ジークジオン???
茉莉慧 :GNOに......逃げてるみたいですね(汗)
詩織 :捕まえるしか....ありませんわね
続く? |