<飛鳥防空司令部・CIC>
ここでも公人が光りに消えるのを見ているものが居た。
「悪いですね....桜小路君...君に生きていてもらっては困るんですよ。」
「う・・・うぅ・・・・。」
その男の足下でうめき声が聞こえる五十代博士のようだ....。
「悪いですね...貴方も邪魔なんですよ....まぁみていてください。戦争は続かなくてはなりませんからね。」
そして男は踵を返す。
「ま..まて!!どうする気だ!!」
怪我を負った五十代博士は絞り出すように叫んだ。
「どうする??...決まってるじゃないですか.落とすんですよ...飛鳥を.....二隻の発掘戦艦で」
男はさも楽しそうに言う..それをみて五十代博士は絶句する。
「どうやってと言いたそうですね....知りたいですか?.....」
うめく五十代博士にウォンは楽しそうに言葉を続けた.
「教えてあげません♪....さぁ.ショーの始まりです」
男は部屋を出ていった.....出ていくときの男の顔を見たら茉莉慧達はこう言ったであろう”ウォン朝鮮明国少将”と....

































少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第参拾話”平和への道...そして”


<悠華機>
「全部隊に告げます・・・私は副長の月守大尉です。...桜小路大佐が戦死なさいました作戦は失敗です...全機戦闘を中止しなさい。降伏します。繰り返します全機戦闘行動を中止後降伏します。」
かねてより指示されていた命令を実行した後、悠華は自爆スイッチに手を伸ばしていた。
「ごめんね..み『待って下さい!!!悠華さん!!』」
「茉莉慧ちゃん??」『はい・・ご無沙汰してます..葵姉さんから伝言があります。』
「伝言??」『はい....”たぶんすぐに真の敵が出てくるわ対処をお願い.指揮権を一時委譲するわ”とのことです。』「真の敵??」『この戦いはその真の敵によって仕組まれたんです』「どういう事かしら??」『来ます!Unknown.....数1500!!飛鳥方向からからこちらに急速接近中!』
「1500??そんな兵力は既に飛鳥には存在しないはず....一体どこから.......仕方有りません!全機迎撃を開始して下さい!Unknownは敵機と認定!即時撃墜しなさい!」
「悠華先輩??」「どうしちゃったんでしょうね??」「まずいんじゃないですか??」
三人娘は突如止んだ猛攻が一転迎撃命令に変わったことに目を白黒させた。
「何をやってるんですか!早くしなさい!!!」
「「「は・・はい!!!」」」
はじかれるように3人娘は飛び立った..機体に無数の切り傷を残しながら.(笑)


<葵機>
「なおとぉ.................」
葵は愛機の中で泣き崩れていた。どれくらい泣き続けただろう...不意に通信ウィンドウが開いた.........。


<大和艦橋>
「石原さん.......本土防衛システムにクラッキングをかけて下さい。」
戦況を把握した奈々は次の手を打つべく電算室の詩織に指示を下した。
『わかりましたわ♪お任せ下さいな♪』


<脱出艇内>
「閣下!敵艦隊からクラッキングが始まったとのことです」
この報告にウォンはほくそ笑んだ。
「そうですか・・・予定通りですね・・くっくっく・・・・これでこの飛鳥もおしまいですね・・・では我々は脱出すると致しましょう・・・光学迷彩開始・・・大気圏離脱後・・・本星へ!」

<悠華機>
悠華は戦いつつも奇妙な違和感を感じていた....敵機に殺気がないのだ。
「おかしい.....敵は数だけのまるで操り人形...飛鈴?貴方はどう思いますか?」
『そうですね......よっと......なんか歯ごたえがなくって....おっと.......なんか....時間稼ぎ??』
『たいちょぉ〜〜〜こいつらしつこいです〜〜〜〜〜』『そうです!しつこい男は嫌われます!』美都里も綾も敵の数の多さに辟易しているようだ。
悠華は考え事をしながら(と言っても敵機を撃墜をしながらであるが)そして報告をすることにした。
「大和・・・・大和聞こえますか???」


<アマテラス軌道上脱出艇>
ウォンはブランデーを片手に戦闘を観戦していた。
「さて......そろそろですね....飛鳥陥落という希にみるショーは」
実にうれしそうである.....しかし・・そのときはいつまでたってもやってこなかった。

<大和電算室>
「先輩!!相手側からクラッキングが始まりました!!」
「予測通りですわね.....でもここのシステムは独立したクラッキング専用システム....いかにミコちゃんや鈴ちゃんに恐怖を振りまこうとしても無駄ですわ。」
.....3年前のラグナロク暴走事件....その真相は帝国と連盟が休戦に入ったことにより真相が明らかになった。
あのときラグナロクが旗艦”三河”情報LINKを結ぼうとしたその瞬間猛烈なクラッキングが”三河”から始まったのである....その結果ラグナロクは制御不能に..そして”三河”はその乗員と共に宇宙の藻屑と消えた..。
詩織はその因果関係を鑑みクラッキング時に独自のシステムを組上げることによりクラッキング対策としたのである。
無論..最強クラスのコンピュータである、ミコ、鈴の協力が得られないのは痛かったが・・・今回程度ならば詩織と美華の二人で何とか対処できたのである。
「美華ちゃん..お疲れさま...とりあえず私達の仕事は終わりましたわ」「先輩こそお疲れさまでした(^^」「後はこのウィルスを解析して同種のウィルスへの対策を練るだけですわ♪」「一応...雛形は出来てるんですよ♪」そういって美華は仕様書を詩織に渡す「なになに....抗ウィルス絶対防壁ソフト”プロテクトシェード”???(汗)」「はい♪」
相変わらず勇者マニアな美華であった。

<脱出艇>
ここでは悲劇がいつまで立っても起こらないためウォンが焦れていた。
「まさか.そんな......あのプログラムが効かないとは!!」
「敵機直上!!!!!急降下!!!!」
「見つかったか!!!!」
直上から蒼い機体が....まっすぐこちらに降下してきているのを見てウォンは呟いた。
「近衛.....葵!!!!」

<少し前...葵機>
「近衛君...すまん。」
辛そうな表情のまま五十代は謝る
「..........。」
葵に反応はない......。
「犯人はウォン朝鮮民国少将だ...。」
その言葉を聞いて葵に始めて反応があった.....まさか奴が生きていようとは!
「ウォンは光学迷彩艦で脱出した....だが見届けるためにまだ近くにいるはずだ。」
葵の瞳に光が戻る.....「感謝するわ!五十代博士!」
そして葵は再び疾風になった。

<再び現在>
「残念だったわね!私の機には光学迷彩スキャナが搭載されてたのよ!!!」
葵機は迎撃レーザーを物ともせず突っ込むと白刃を煌めかせた..そしてウォンは白刃から燕が飛び立つ様を見た.......そしてそれがウォンがこの世で見た最後の光景だった。
「ハイル!ヒ........」
どごぉぉぉぉぉウォンの最後の言葉は爆発の轟音にかき消された。
葵機が白刃を鞘に収めると同時に脱出艇は真二つに折れ爆発...炎上した。

「心夢想一刀流....燕返し」
葵が呟くのと同時に再び葵の双眸に涙が溢れる。
「公人....敵は.取ったわよ..。」
そしてこの直後、黒色のMTは突然動きを止めた.....戦いが終わったのである。

<大和艦橋>
「ただいまを持って、アマテラス奪還作戦の完了を宣言します!みなさんご苦労様でした」
奈々の宣言の後艦内は大騒ぎに見舞われた......その中でただ一人茉莉慧は悲しげな微笑みをたたえつつ艦橋を後にしようとした。
(戦闘は終わった..義兄様の汚名は.........もう晴れない)
「茉莉慧さん..お話があるんですが.......。」「歌織ちゃん..。」呼び止めたのは歌織であった。「実は...........。」




<一週間後>
帝都飛鳥の中央に位置する御所では和仁の即位の礼が盛大に行われていた。
今回の即位の礼で特筆すべき事は2つ
一つは即位に対際し銀河帝国よりクレリア・フォン・ランドルフ皇女が皇帝名代として参列した事...言うまでもなく彼女が銀河帝国の皇族として初めてアマテラスの土を踏んだ人物となった。
もう一つは反乱に参加していた全ての将兵の罪はこの恩赦により追求されないことになっている。謎の存在とはいえ敵性国家の存在が彼らの命を救った....今粛正行うわけには行かないからだ...それ以外にも踊らされた彼らが哀れであったと言うこともあるが。

奈々は中将に昇進し岩戸要塞基地司令兼駐留艦隊司令長官に就任
岩戸要塞は平和維持艦隊”エンジェリック・フリート”活動基地であり初の連盟、帝国共用基地となった。

そして......


<大和医務室>
バン!!!
大きな音を立てて扉が開くそして中に飛び込んでくるのは..葵だった。
葵は目当ての人物を見つけるとその人物の胸へ飛び込んだ。
「公人!!!!!!」
「かなり痛いぞ.....。」
「馬鹿!心配させた罰よ!!本当に死んじゃったと思ったんだから!!」
そして葵は公人の胸に沈んだ...(公人だ....本物の公人だ!)
公人は葵を抱きしめつつ頭をなでた。
「しかし...まさかこの俺が詩織に助けられるとはな..。」
「私ではご不満でした??そりゃ確かに未完成の次元転送装置の実験台にしたのは悪かったと思ってますわ...でもあのままだったら確実に死んでましたわよ??」
「二人とも...酷いです私だってがんばったんですよ??」
そこには詩織と茉莉慧が立っていた。
先の戦いでミコと鈴が本格的に戦闘に参加しなかった本当の理由はここであった。未完成の次元転送装置を使うためプログラムの補正と葵と公人の座標位置の追尾..それらを茉莉慧の全面バックアップのもと行っていたのだ。
結果は成功・・・とまでは行かなかった。
無理な転送により公人の肉体(主に内臓)に多大な負担を掛けていたのだ。
とはいえ全治1ヶ月程度ではあるが。

「「し詩織...に茉莉慧..一体何時から」」
「えっと”公人!!””かなり痛いぞ”..からでしたかしら??」
「「最初からじゃない(か)」」
「二人ともメロドラマも真っ青なラブシーンでしたわ」
そこで公人も葵も自分たちがどういう体制か気が付いた....。
まさにラヴシーンであるそして....”バッ!”っと言う効果音が聞こえそうな勢いで離れてあたふたと言い訳を始めた。

「これは..その...あれよ!!うんあれ!!」「そうだ・・あれだよ!!」


「二人とも...その辺にして下さいましね....何言ってるか解りませんわ」
「義兄様も葵姉さんも....本当に恥ずかしいですもん。」
「バカップルとはよく言った物ですわね。」
「そうですよね・・・・・」
優しげな詩織の微笑みとうれしげな茉莉慧の微笑みが交わされる

「「だから!!そんなんじゃない(わ)」」
「何処がどう違うんですか??」
「「うっ」」


エンジェリック・フリートの門出は順風満帆のようである。









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あとがき
茉莉慧  :参拾話です
葵     :第一部完結ね
詩織   :予定登場人物で未登場の方がたくさんいらっしゃいますわ
茉莉慧  :どうする気なんでしょうね
詩織   :困りましわたねぇ
茉莉慧 :さて第二部ですが・・・コミケ後を予定しています(^^
葵    :他にも第一部完結を記念して改定版をカード型CD−Rでコミケで販売する予定らしいわ
茉莉慧 :長々と読んでくださった皆さんありがとうございました(^^
詩織   :新シリーズでもよろしくお願いしますわね
葵    :8月末にまたお会いしましょ(^^




続く?