<大和艦橋>
ここでは既に出撃前の恒例となりつつあるZEEKの訓辞が始まっていた。
「告げる・・・こちら艦長。まもなく演習のために出航する。帝国との戦闘が事実上終わりを告げたため久々の帝国軍との合戦である。よって諸君らに私が言いたいことはただ一つだ!我が軍の意地にかけても防衛作戦を成功させろ!以上だ!」
ZEEKの艦内放送が終わると全員がはじかれるように一斉に出撃準備に取りかかった。
(プシュッ)
ZEEKがそれを満足そうに眺めていると突然艦橋の入り口が開くと二人の女性が駆け込んできた。
「「すみません遅れました!」」
「遅いぞ...石原君、桜小路君.......で首尾はどだ?」
「問題有りませんわ♪」「そいつは結構」
入ってきたのは茉莉慧と詩織であった。ZEEKと詩織の会話は意味深な発言であったが、茉莉慧の格好に気を取られていた為その意味を理解する者は居なかった。
「茉莉慧......貴女その格好は一体.....」
美留の全員を代表した一言に茉莉慧は恥ずかしげにZEEKのほうを見て。
「艦長...やっぱり注目されます...来る途中でも変な目で見られるし....。」「問題ない....シナリオ通りだ。」
「ふぇ〜〜ん何のシナリオなんですか〜〜」
ZEEKの無責任発言に茉莉慧は泣きが入るが渋々自分の席に着いた。
ちなみに茉莉慧の今の格好は白衣に緋袴...いわゆる巫女装束であった。
少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第参拾六話”ラインの演習(中編)”
<黄泉回廊帝国側出口>
ZEEK達が防衛出動するに先んじること約12時間、帝国艦隊は黄泉回廊の帝国側の出口で一旦集結しラグナロクとダイダロスUを中心に2つの輪形陣に陣形を組み直し進撃を開始した。
<ラグナロク艦橋>
「こちらはノイエ大佐だ。我々は過去最大最精鋭の兵力を持って岩戸要塞占領任務に就くことになった。これは過去一度として成功しなかった攻略戦の雪辱戦である!だが帝国の最精鋭たる諸君らなら可能であると信じている。大神オーディンの加護と諸君らの全力以上の成果を期待する!以上!」
艦橋にいた全員がノイエ大佐に一斉に敬礼をすると即座に作戦行動に入った。
「さすがだなノイエ.....しかし危険分子の卿に大艦隊を与えるなんて”守護天使”殿も思い切ったことをする....果たして吉と出るか凶と出るか。」
ラグナロクの艦橋でフェサルーン大佐は人知れず呟いていた。
<黄泉回廊岩戸要塞宙域>
ラグナロクは輪形陣を崩す事無くこの宙域に侵入を果たしていた。
「前方4万宇宙キロに敵艦隊を確認、装甲空母”龍鳳”を中心に鶴翼陣形です。」
ラグナロクレーダーオペレーターのトリノ中尉の報告を聞いたノイエ大佐はいぶかしんだ。
「ん?トリノ中尉”大和”は確認できないのか?」
「はい、敵艦隊は装甲空母2、高速戦艦1、巡洋艦2、対空駆逐艦16のみです。」
ノイエ大佐とフェサルーン大佐は顔を見合わせ眉を上げた。
「ノイエ!!」
「ああ......敵も二手に分かれているらしい。...各艦暗礁宙域からの奇襲に備えよ!」
「敵艦載機多数・・・急速接近中」
「対空戦闘用意!全兵装使用承認!(オールウエポンフリー)全艦回避運動開始!(レッツダンス!)」
ノイエ大佐の命令以下各艦が慌しく対空戦闘機動を始めた....その時、葵率いる艦載機隊が突入を開始した。
<麗風 葵機>
「良いこと?私の可愛い貴方達。私達の任務は敵の策敵能力を削ぐ事!大型艦はどうでも良いわ!ともかくピケット艦を一隻残らずつぶすのよ!全機攻撃開始!」
葵の命令以下、聯合軍艦載機隊は一斉に”巡洋艦以下の艦艇”に殺到しヒットアンドウェイ作戦を開始した・・・が葵は敵の奇妙さに気が付いた。
(おかしいわ....数が少なすぎるそれに艦載機をあげてこないなんて.......ダイダロスUも不在....まさか敵も兵力を分けている?)
そう考えをまとめると葵はしかるべき措置を取り始めた。
「龍鳳!龍鳳!聞こえますか?.........。」
<ラグナロク艦橋>
「重巡プリンツオイゲン、撃沈判定、駆逐艦グラム、フェンリル、エッダ、スレイプニ爆沈判定、高速戦艦フッド、キングジョージ5世小破判定」
クリームの無情な判定報告が響く中、あっという間に沈黙していく護衛艦艇の様子にノイエ大佐は敵に感心していた。
「敵艦載機隊は”蒼き稲妻”直卒か.....見事だな....だとしても我が艦隊の対空機動のなんと未熟なことか....。」
「ノイエ?」「ああ....そろそろ頃合いだろう」
操艦で忙しいフェサルーン大佐はノイエ大佐に問いかけノイエ大佐は頷いた。
「ダイダロスUに連絡!突入開始せよ!」
ノイエ大佐の命令の下ダイダロスUを中心とする別働隊は突撃陣形で暗礁宙域から飛び出した。
優勢に戦局を進めていた防衛艦隊は有らぬ方向からの突撃に慌て陣形を崩す羽目になった。
「巡洋艦1、駆逐艦8を撃沈判定!」
クリームの報告を聞きノイエ大佐は命令を下す。
「よし!我々も突入を開始する!陣形を突撃陣形に組み替えつつ突入か..」
「待って下さい!垂直前方1,3,5,7,9,11時方向より同時に敵艦隊が出現しました。」
「なに?それで”大和”は何処だ!」
トリノ中尉に機先を制されたノイエは不機嫌そうに聞き返した。
「まさか.....そんな.......」「どうした...ん..だ」
うろたえるトリノ中尉に素早く近寄ったフェサルーン大佐も固まる。
「フェサルーン...どうしたんだ!」
いらだったノイエ大佐はフェサルーン大佐に聞き返していたがその返事に艦橋が凍った。
「......6艦隊全てに”大和”を確認した.......」
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あとがき
ZEEK :参拾六話です
茉莉慧 :巫女装束・・・ですか・・・それにしても演習ですか・・・どんなことやってるんです?
ZEEK :今は知らない所で巫女ちゃんと鈴ちゃんが大活躍だ
詩織 :そうですわね...演習は基本的に模擬弾とレーザー照準の照射を行って命中判定をしていますわ。艦のどこに当たったかを大和、ラグナロク両艦に転送され当たった兵装は口径、弾種等から破壊判定を行い破壊と認定された場合その箇所のライフラインを除いて演習終了までシステムをしますわ。
葵 :壊れたところだけ死んだふりって訳ね
茉莉慧 :なんか規模の大きなサバゲー見たいですね(^^;;;
詩織 :現代の実際の演習だって似たようなものですわ(笑)
ZEEK :ってことで次回もやってやるぜ!!!(シュタッ)
続く? |