<ラグナロク艦橋>
「ろ.....6艦隊....全てに大和だと?」
絞り出すように返事をするノイエ大佐の心境はいかばかりか・・・・
「トリノ中尉、識別信号は正規の物なんだな?」
「はい、艦載機のパイロットも大和を確認しています。」
「ノイエ中尉・・・鈴君はなんと言っている?」
「はい、全てにミコちゃんの気配がすると・・・・・。」
一つ一つ丁寧に確認をするノイエ大佐はらしくない雰囲気で溜息を一つつくとニヤリと笑いこう呟いた。
「まるで魔法だな・・・敵将はどんな手段を用いた物か・・・・まぁ・・奇跡はこれまでだろうが。」
ラグナロクでのごたごたはともかくとして。現実に突きつけられたダイダロスUを旗艦とする分艦隊は一番手近にいた艦隊に”実弾”を発射打ち出していた。



















少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第参拾七話”ラインの演習(後編)”

<大和艦橋>
「やはり分艦隊は実弾装備か......。」
ZEEKの呟きは艦橋全ての人間に再認識させた。この男はこれを見越していたのだ・・・と。
「しかし艦長、これはペテンだと思います。」
「これも偽装機雷”ミラージュ”のちょっとした応用だ・・・それを実戦レベルで使うことに何も問題有るまい。・・まぁいい桜小路君、作戦を第2段階に移行、折を見て第3段階に移る。」
美留の苦笑混じりの意見にZEEKは軽く返しつつ茉莉慧に次の指示を出していた。
「本当によろしいのですか??」
「当然だ、我々の敗北は和平の崩壊を意味する。・・・失敗は許されん!」
「..........了解です。」
あくまで反対の立場をとっていた茉莉慧は渋々と言った風であったが印を切り始めた....。

<ラグナロク艦橋>
「分艦隊砲撃開始!・・・実弾です!!!」
トリノ中尉の報告に艦橋の全員が一斉にノイエ大佐を注目する。
「問題ない!全て事故だ!」
「何処がですか!!アーダルお兄さま!戦争を起こす気ですか!!」
「問題ないと言っている!任務中だ!席につきたまえノイエ中尉!」
「くっ・・・・・了解しました。」
くってかかるクリームにノイエ大佐は平然と返した・・・・しかしそこまでだった。次のトリノ中尉の報告が困惑を呼んだ。
「分艦隊の攻撃の弾着を確認!されど敵艦隊への被害皆無!なお6艦隊全てから機動機雷”ホクサス”の放出を確認!」
「クリーム!敵”ホクサス”の指令系統をたどれ!本体が解るかもしれん!!」
あまりのことに呆然とする中フェサルーン中佐は思いついたようにクリームに指示を出しクリームもフェサルーン中佐の意図を理解したのか急いで解析に入る...........しかし結果は芳しい物ではなかった。
「”ホクサス”のコントロールコードは6艦隊全てから発しています。」
「その先は?」「岩戸要塞です・・・そこから先に関しては多チャンネルのため解析不能です。」「ええい!狡猾な!!」
一瞬の光明があっけなく崩れたノイエ大佐は忌々しげにはき捨てるが事態が好転したわけではない.....全てが本物といえるし偽物といえる....まさに万事休すであった...しかし戦局は推移し続ける。
「”マザーホクサス”分艦隊へ接近、”ビットホクサス”の放出を確認!」
そして蛍のような光が分艦隊を包みあげていき異変が生じ始めた。
分艦隊は統制もへったくれもないと言わんばかりに有らぬ方向へむやみやたらな射撃を始めたのだ・・・。
「何があった!」「原因不明です!ただし分艦隊からは悲鳴のような通信が...あ!・・高速戦艦”プリンス・オブ・ウェールズ””レパルス”重巡洋艦”ドラゴン”通信途絶!!」
艦橋の面々はただ沈黙してゆく味方を見守ることしかできなかった・・・・・。解っていることは1つ”ビットホクサス”が各艦の周りを五芒星を描いていることぐらいであるが何らかの魔術のたぐいが使われたのは間違いない。
「奴らは悪魔か・・・・・・・」
ノイエ大佐がぼそりと呟いたのはダイダロスUが沈黙するのほぼ同時であった。

<大和艦橋>
「.........ナウマクサラマンダ...」「頃合いだな・・・石原君、敵将に降伏勧告を...解ってるとは思うが多チャンネルから頼む。.......あと結城君、過粒子砲の準備を頼む」「了解です」
茉莉慧の陰陽術が艦橋内に流れる中、ZEEKは次の指示を出していた。
「これで終わりですわね。」「近衛君は暴れたりないだろうがね。」「クスッ...そうですわね」
艦橋に明るい雰囲気が流れる........がZEEKは咳払いをし表情を引き締めると通信をはじめた。
「敵将に告ぐ........敵将に告ぐ..........」

<ラグナロク艦橋>
「司令........敵将から通信です。」
「発信源は?」「相変わらず特定不能です。」
通信を取り次いだクリームも悔しそうに返事をかえす。
『敵将に告ぐ.........敵将に告ぐ...........勝敗は決せられた。これ以上の先頭は無益である!速やかに終戦処理をされたい』
「ZEEK中佐、私にも武人の意地がある!貴官はラグナロク撃破後勝利宣言をされよ!」
武人の意地とばかりにノイエ大佐は反論するがそれに対するZEEKの返事はいたってシンプルであった。
『了解した。ラグナロクを撃破する。』
その直後であった。
「過粒子砲の照射を確認、真後ろです。本艦は撃破されました。」
クリームの無常な報告があがり.......あっけなく勝敗は決した.....。
残されるは悔しげにこぶしを握り締めうつむいているノイエ大佐の姿があった。


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あとがき
ZEEK :参拾七話です
茉莉慧  :少佐....今回のトリックは何ですか?
ZEEK :今回作中でZEEK中佐の使った策は八門遁甲....説明は詩織君に頼む
詩織   :わかりましたわ♪
葵    :なにやら長くなりそうね・・・手短に頼むわ
茉莉慧  :やばいですね(^^;;
詩織   :八門遁甲とは簡単にいうと方位学と地政学を利用した心理戦法ですわ古くは三国志時代の軍師:諸葛亮孔明が使い日本でも織田信長や徳川家康などといった戦国武将もそれに従った戦法を使ったといわれていますわ。これは相手側の武将の素性を研究し相手の行動予測をした上で逃げられない用に追い込むといった呪術的要素も含まれていたといわれていますわ。
葵    :あとダイダロスUを襲ったビットホクサスは何をやったの?
茉莉慧  :それは私から説明しますね。ビットホクサスが行ったのはいわゆる幻術です。ビットホクサスの軌道を土御門家最強の陰陽術師:安部晴明(あべのせいめい)の紋章である”晴明紋(五芒星つまり星マーク)”の影響下に入れたんです。

葵    :それにしても前回といい今回といい解説だらけね(^^;;
詩織   :仕方ありませんわ...少佐が趣味に走って専門用語並べ立ててしまったんですもの(^^;;
ZEEK :ってことで次回もやってやるぜ!!!(シュタッ)
三人娘  :ごまかすな!











続く?