<大和艦橋>
「作戦終了....岩戸要塞に帰投する!各艦に伝達、『各艦序列二従イ集マレ』」
「「「「了解(ですわ)!」」」」
ZEEKが作戦の終了宣言をすると大和の艦橋の人間は張りつめていた空気がゆるんだ。
(やっと・・・・・・終わった・・・・・)バタッ
その雰囲気の中....一人朦朧としていた茉莉慧は....そのまま気を失った。
「茉莉慧ちゃん??」「無理もない機械で増幅していたとはいえあれだけの術を行使したんだ・・・休ませてやってくれ。」
「わかりましたわ....(ピッ)ミカちゃん?担架を持って艦橋まで来て下さるかしら??ええ...そう..そうですわ。」
茉莉慧に駆け寄る詩織が指示を出しているのを横目にZEEKは艦橋を見回し一括した。
「演習で勝利しても事故を起こしては台無しになる!最後まで気を引き締めて勤めるように!」
「「「了解!」」」



















少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第参拾八話 ”軋み”

<ラグナロク艦橋>
「要塞からの連絡もない.....私の目論見は全て潰えたか....。」
「ノイエ.....お前....。」
肩を落とすノイエ大佐にフェサルーン大佐はためらいがちに声をかける。
「ふふふ....我ながら無様だな...フェサルーン大佐....貴官の役目だ..反逆者を拘禁したまえ。」
「!!!」「お兄さま?」「クリーム...すまんな...何をしている?フェサルーン!!貴官がが今現在の最上級指揮官だ」
「......解った」「フェサさん??」
静かに返事をするフェサルーンをクリームは驚いたように振り見た。
「ノイエ大佐...自室で謹慎するように...貴官の身柄は本職が預かる...追って司令長官殿下より指示があるだろう。」「...了解」
艦橋に重い空気はノイエ大佐が艦橋を出ても軽くなることはなかった。
「..各艦に伝達.....演習終了速やかに岩戸要塞に帰投せよ...追伸”早まるな”....以上だ」
「「「「「.....了解」」」」」気分は晴れやかではないがやるべき事はやらねばならない艦橋のクルーは気を取り直して任務に精励することにした。
≪クリームお姉ちゃん??元気だしてね??? ≫「ありがとう鈴ちゃん....私は...大丈夫だから..」
鈴の心配げな様子にクリームもこれではいけないと気を入れ替えて任務に精励した。
「それにしても......どんな魔法を使ったのやら......。」
ラグナロクの艦橋にフェサルーン大佐の呟きが妙に大きく響いた。

<岩戸要塞司令室>
ここでも一風変わった空気が流れている。
「ぱぎゅ〜〜〜私は書類の出前に来ただけですのにぃ〜〜〜」
床にぺたんと座り込んで居るのは月守澪三等事務官....これだけを見ていればまことに可愛らしい光景であるのだが周りに転がっている帝国陸戦隊の気絶した山がシュールである。
「月守さんが良いタイミング出来て下さったので本当に助かりました。」
そのシュールな光景を気にした様子もなく奈々はいつものようににこやかに返事をした。
「霧島閣下〜〜〜〜(滝涙)」「まぁまぁ.....はい♪書類の方は済みましたよ♪ご苦労様でした」
「ううぅ.....なにげに重労働させられた気がするです。」
澪ちゃん...きっと気のせいだ!がんばれ!明日はホームランだ!

『なかなか興味深い作戦でしたね』
「ええ.....ZEEKさんも悪巧みをさせると抜け目が無くて....ノイエ大佐には申し訳ないですけどやはりあれはペテンというべきなんでしょうね。」
『そうですね......。』
澪も退室し陸戦隊員が運び出されるのを横目で見ながら奈々は司令席のモニターで誰かと通信中のようである
『でも.....ノイエさんにも困った物です....まさか実力行使に出るなんて....』
「思ってたんでしょ?」『解りますか?』
おどける奈々に通信相手...クレアは一瞬眉をひそめそれに奈々は微笑で答えた。
「わかりますよ....主戦論者でありながら帝室に絶対の忠誠を誓う近衛騎士....彼を和平側に傾けさせたいんでしょ?」
『貴女には隠せませんね.....』「似たような考えを持ってますからね....で.....どうするんです?」
『そうですね.....一ヶ月間罰掃除(海賊狩り)でもしてもらいましょうか..??』「くすっ...それは名案かもしれませんね。」
クレアがいたずらっ子のような表情で提案をすると奈々はクスリと笑い同意した。
『それにしても今回は派手な作戦でしたね....それにあんな広域で術を行使するなんて』「やってること自体はWW2の時代にやってたことの応用(注)だそうですよ??まぁ彼女の家系からすればお家芸みたいな物ですし。」
『そういえば・・・そうでしたね・・・・』「もっとも....今頃疲労で倒れてるでしょうけど....」『それはいけませんね...ゆっくり休んでもらわないと行けないですね。』
『クスクスクスクスクス.....それでは長くなりますのでこの辺で』「そうですね.....ではまた」
二人はひとしきりくすくすと笑うと通信を切った。

<ラグナロク司令長官室>
疲労の極致にあった茉莉慧であったが大和が入港を済ませるころには回復しここラグナロクにノイエ大佐を訪ねてきていた。
「フロイライン....謹慎中の私にどのような御用かな?」
「大佐の....真意を伺いたく参上しました。」
いつものぽけぽけ〜っとした表情でなくどこか思い詰めた雰囲気の茉莉慧にいぶかしみながらもノイエ大佐はコーヒーを勧めた。
「真意?」「はい....」「真意とは?」「なぜ....戦乱を求められるのですか?」「求めているわけではない。」
「ではなぜ先ほどの暴挙を?」「暴挙?」「反乱未遂です....八尺瓊システムの管理者でもある私が知らないわけ・・・ないじゃないですか?」
「フロイラインは何でもご存知のようだ..ならなぜあえて私に問にこられた?」
「過日....私の兄も大佐と同じような理由で反乱を起こしました。」「ほう・・・黒龍が・・・ねぇ」
「どうして殿方は平和を望まないのですか?兄が反逆者だなんてクリームさんを不幸にするおつもりだったのですか?」
はぐらかすノイエ大佐に茉莉慧がくってかかる。
「女子供には関係のない話だ!男にはやらねばならないときがある...それが大儀だと私は信じている。」
「ではご自分の行動が間違ってないと?」「だとしたら?」
バチィィィィィィィィィィィィィィィィン!
ニヤリと笑ったノイエを襲ったのは茉莉慧の腰の据わったビンタであった。

(注)WW2・・第二次世界大戦中にも呪術的な試みは行われていた。
イギリスではストーンヘンジで魔女達がヒトラーに”お前はドーバーをわたれない”などと言った念を送ったり日本でもルーズベルト米大統領等の呪殺の儀式が盛んに行われていた。ドイツに至ってはヒトラー総統が元魔術結社出身だったという説すらある。

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あとがき
ZEEK :参拾八話です
茉莉慧  :なんだか私がシリアスですね........私らしくないし.....
ZEEK :わかってる......わかってるんだ
茉莉慧  :なんでまた???
ZEEK :いや.........葵君か茉莉慧君しかこの役を任せられなくてね.....
茉莉慧  :で.....葵姉さんだと大変なことになっちゃうと....
ZEEK :わかってるやん
葵    :ちょっと?二人とも???好き勝手言ってくれてるわね..(--#
ZEEK :やべっ
茉莉慧  :あ....葵姉さん...いたんですか...(^^;;
ZEEK&茉莉慧 :ってことで次回もやってやるぜ(です)!!!(ダッシュ)
葵    :二人とも!待ちなさい!!!












続く?