<岩戸要塞能楽堂ホール>
茉莉慧は能楽堂ホールの舞台の上に立っていた、祭事や式典の時以外の静かで厳かなここの雰囲気が茉莉慧は好きだった。
「私・・・・・・どうしてぶっちゃったんだろう・・・・・・・・。」
茉莉慧は先ほどの一件を思い出しノイエをぶった手を胸元で抱きしめた...どうしてあのようなことになったのか自分が解らない。
どれくらい時が過ぎたであろう....♪〜〜♪〜〜〜〜〜、不意に笛の音が静かな能楽堂に流れた。
「詩織さん?......」
ばっと振り返る茉莉慧が見たのは紅い漆塗りの横笛を吹く詩織の姿であった。
♪〜〜♪〜〜〜〜〜♪
詩織は茉莉慧と目が合うとニッコリ微笑みつつも演奏を続ける......そして茉莉慧ゆっくり頷くとは舞いはじめた。

















少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第四拾話 ”濡れ衣”

<能楽堂入り口>
ノイエが能楽堂ホールに到着したとき中から笛の音と茉莉慧の声がかすかに聞こえてくるのに気が付いた。
”吉野山峰の白雪践み分けて入りにし人の跡ぞ恋しき しづやしづしづのをだまき繰り返し昔を今になすよしもがな”
ノイエが中にはいると白装束に緋袴、烏帽子に太刀と言った出で立ちの茉莉慧が扇を片手に舞っていた。
「可憐だ..............。」
ノイエは茉莉慧の舞に魅了され引き込まれていった.....。

茉莉慧はただひたすら舞っていた『茉莉慧....悩んだらとりあえず舞ってみなさいな...何もかも忘れて舞いなさいな...悩んでるときは何をやってもだめ、特に貴方は泥沼なんだから』
(母様は引き込みがちな私によくそういって励ましてくれたんだっけ.....。)
茉莉慧は亡き母を思い出しつつ舞う......そして舞終わったときただ一人拍手を送る人物が居た。

「の・・・ノイエ大佐・・・・・・・・・・・」
「素晴らしい舞だったよ...あれは飛鳥皇国に古くから伝わる者なのかね?」
「はい...母が生前好きだった白拍子の舞で”静の舞”と言います。」
「....すまないこと聞いてしまったな...許して欲しい。」
沈みがちに言う茉莉慧にノイエは謝罪を入れた.....が茉莉慧が言葉を発する前に会話に割り込んできた者が居た...詩織である。
「大佐にその謝罪をする権利はありませんわ。」
「詩織・・・さん?」
詩織にしては珍しく冷めた...そう冷たい返事に茉莉慧も驚いて詩織を見る。
「どう言うことか説明してもらえ得るかな?Dr(ドクトル)石原」
ノイエも不当と感じたのであろう、聞き返す声が冷たい、しかし...次の詩織の言葉は二人を驚愕させるに十分であった。

「シラを・・・きられますのね・・・茉莉慧ちゃんの母君、先の陰陽寮長官、桜小路沙由香様を暗殺した方の台詞とも・・・思えませんわね。」

「「それはどう言うことですか(かね)!!!!」」
二人がばっと詰め寄る...が....詩織は淡々と言葉を綴る。
「5年前の5月10日...前線基地視察中の沙由香様はガニメデ監視基地にて帝国機動軍の強襲を受けた.....これは間違い有りませんわね?」
「間違いない...私は初めて指揮を任され黒龍や蒼き稲妻と初めて戦った...忘れようがない。」
昔を懐かしむように言うが詩織は表情すら変えず確認した返事を受け続ける。
「沙由香様は防備の薄いガニメデ監視基地の民間人避難させるべく戦闘終了後、駆逐艦3隻に護衛された非武装政府専用艦で避難をしようとされましたわ。」
詩織は一旦言葉を切り二人を交互に見る二人ともうなずき先を促す。
「出航1時間後護衛駆逐艦や葵達護衛征宙隊の目前で1個大隊に相当する数の帝国軍艦載機隊の襲撃を受け政府専用艦は撃沈さ「待ってくれ!」」
慌てたノイエは詩織が言い終わる前に反論した。
「確かに私はあのときあの戦場に派兵された.あの近辺に友軍は我が隊だけだった...しかしあの時私は政府専用艦を撃沈などしていないしその報告も受けていない!だいたい兵を引いたと見せかけて出てきた民間人を討つなど騎士のすることではない!! 」
その台詞に詩織は目をすっと細めこういった。
「言い訳ですの?.....男らしくないですわ.....その時、白銀のワルキューレも確認されておりますわ。....それに”双撃陣”は大佐の得意戦術でしょう?」「事実無根だ!確かにあの時期白銀のワルキューレを陛下より賜った居たのは私だけだ.....しかしやっていないのだ!」
「ノイエ大佐.......。」
茉莉慧はなぜか確信できた...この帝国騎士は嘘を付いていないと...。
「大佐...誓えますか?」
「皇帝陛下と我が剣に誓おう!それは私ではない!」
「.....詩織さん..私もノイエ大佐がやったというのは信じられません。」
詩織は母の仇かもしれないノイエを庇おうとする茉莉慧をみて不意に表情をゆるめて後ろ茉莉慧達の後ろにいる人物に問いかけた。
「だ...そうよ..葵?」
「..ちっ...本人と相対してもしやとは思ったけど......よもや本当とはね.....」
「まさか私の知らないところでこんな濡れ衣を押しつけられているとはな.....通りで卿達が私を恨むわけだ......だが自らの潔白は果たさねばならん。」
「そうね...私も公人も....とんだ道化だったわけね....何処の誰だか知らないけど...まったくふざけてるわ!」「まったくだ!」
妙に意気投合してる二人を見て茉莉慧はなぜかクスリと笑ってしまうのであった。


<岩戸要塞第一宇宙軍港>
趙 美華中尉は詩織に頼まれて詩織の恩師にあたる人物達を迎えに来ていた。
「先輩も忙しいですし私がしっかりお連れしないといけませんよね!ううぅ〜〜なんか緊張してきましたです....って、あれはクリーム中尉・・ですよね?」
美華は前方を歩いているクリームを発見すると全速力で突撃を開始した。
「くり〜〜むさ〜〜〜ん!!」
「つ...趙中尉..大声で呼ばないで下さい...恥ずかしいです(^^;;」
「あはっ すきません♪でもでも...知ってる人を見つけるとなんか嬉しくなりませんか?」
クリームの柔らかな抗議に美華は悪びれるでもなく返事を返す。
「そ...そりゃまぁ...そうですけど....趙中尉も誰かのお出迎えですか?」「はい♪先輩の恩師に当たる方達でとても立派な方たちなんですよ♪」「そうなんですか...私も帝星から来た博士をお迎えにあがる途中なんですよ(^^」
うれしそうに返す美華とクリーム....しかし和やかな雰囲気もそこまでであった。
「!!!!!!!!」「!!!!!!!!」
突然聞こえてきた罵声の応酬に驚いたクリームと美華が見たモノは...。
「卿の設計した貧相な戦艦は見るにたえんな!戦艦とは熱く!硬く!そして強くなくてはいかんのぢゃ!!!」
「ふっ....貴様にそんな講釈をたれられるとは私も老いたもんだ....鈍足戦艦しか設計できない貴様に言われるべくもないわ!」
「貧相な防御力しかもたん艦を”戦艦”と言えと?ふっ笑わせてくれるわい!」「まぁまぁお二人とも押さえて....。」
二人の老人が激しく口論をしその間でおろおろとする初老の男であった。




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あとがき
ZEEK :第四拾話です
茉莉慧  :私白拍子の舞なんていつから舞えるようになったんですか?
ZEEK :いや妄想の果てに(マテ)
詩織   :陰陽師>巫女さん>白拍子(巫女崩れ)って事らしいですわ♪
ZEEK :あはははははははは
茉莉慧  :くすん・・・・・渡しやっぱり少佐に遊ばれてる
ZEEK :いえ〜〜い
葵    :叔母様・・・・暗殺されたのね
詩織   :犯人は誰なんでしょう
ZEEK :多分読者の方の考えるとおりだと思うよ
茉莉慧 :それと最後に口げんかしてた人たちって.......
葵    :多分あの老人たちでしょ
ZEEK :ってことで次回もやってやるぜ!!!(ダッシュ)
葵    :それはそうと作者は感想に飢えてるらしいわ.....できたら”読んだよ”だけでも言ってあげると助かるわ
茉莉慧 :御意見御感想をお待ちしてます♪











続く?