<岩戸要塞作戦司令室>
奈々がZEEKを連れて作戦司令室に入った時そこには駐留する戦力の長達がすでに集まっていた。
「司令長官に敬礼!」
入室に気が付いたノイエの号令一下、全員が起立敬礼し奈々を迎えた。
奈々は返礼をしながら将棋盤ともいわれている戦況報告ボードに近づくと傍らのノイエに質問を投げかけた。
「ご苦労様です・・・・戦況報告をお願いします。」




















少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第四拾四話 ”新たなる動乱の予感”

<数時間前 L3コロニー警戒センター発令所>

和平条約が締結され真っ先に緊張の解けた職場・・・それは間違いなく警戒センターである、当面の敵の消滅により警戒すべきはデブリ、隕石等であり自動排除機構により排除されるはずであった、なぜならそれらはECMも使わなければ回避行動もとらないのだから....。
もちろん宇宙海賊などの襲撃も予想されるが彼らの間ではコロニーや宇宙ステーションは襲撃しないという暗黙のルールが存在しており当面の脅威とならないのが解っていた為である。
敵艦隊襲来の警戒と即時対応、入港する宇宙船籍の照会、デブリや隕石の排除等緊張を強いる事のおおい警戒センターであるが、一番警戒の比重の大きかった敵艦隊襲来の警戒態勢が解かれたことにより一気に緊張から開放されてしまったのだから。
「どうしたんだ?落ち着かないな?」
中年のベテランオペレーターが先程からそわそわしている若いオペレーターに問いかけた。
「今日彼女とデートなんですよ。和平条約のおかげでやっと彼女とデートできる時間が出来たと思うと嬉しくって」
「そうか.......まぁ若いうちはそれもいいだろう」
「おやっさんだってまだ若いじゃないですか・・・」
結果から言うと彼はデートに行く事が出来なかった.....なぜなら。
「反応!反応!!...........警戒レーダーのミッドレンジに突然質量が発生!!!発生数多数!!数...一個艦隊規模!!船籍!所属共に不明!!!」
別のオペレーターのあまりに緊張した報告に先程の中年オペレーターが怒鳴り声を上げる。
「馬鹿野郎!何でミッドレンジに1個艦隊規模の質量を捕らえるまで気づかなかった!!」
「すみません!気がついたときにはもうこの距離に居ました!!」
そして更なる凶報が伝えられる。
「正体不明艦隊発砲開始!!!!」
中年のオペレーターは毒づきながら指示を続ける
「揃いも揃って平和ボケしやがって!!平和ボケするほど和平締結からたってないじゃないか!!本国及び岩戸要塞に連絡!マルフタサンマル時に正体不明の艦隊の襲撃を受ける!至急来援をこう!急げ!!」

この通信は無事に帝星オーディンと岩戸要塞に入電する事となるが........1時間後に音信途絶となった。

<岩戸要塞作戦司令室>
「以上が概要ですが........何か懸念すべき点がありましたでしょうか?」
「ええ....何点か..........。」
怪訝な顔をする奈々に報告を終えたノイエが質問をすると奈々は少し思案をすると考えを述べた。
「まず第1にミッドレンジからの攻撃を受けた後に発信した救援要請が"無事に”ここまでとどいた点です。」
「たしかに......まるで我々を誘っているようですな。ですが我々の存在意義である以上行かないわけには行きません.......これは罠なのでしょうか?」
ZEEKの問いに奈々が軽く首を振って答えた。
「まだそれはわかりません、前回の襲撃時に敵艦隊の大半が無人艦である事が判明しています。あるいは遠隔操作する都合上無線妨害が出来ないのかもしれません」
「ふむ・・・・・・私はその艦隊に対峙した事は無いがそれほど厄介なのかね?」
ZEEKにノイエが質問する。
「はぁ.....技量は低く錬度も高くはありません...しかし自動艦隊と言うのは非常に厄介なものでありまして疲れを知りません、したがって隙というものが出来にくく・・・そして最悪な事に数が異常なほど多いのです。」
「なるほど・・・・・・たしかにそれは厄介だな。」
ノイエも腕を組んで考え込む....そこに奈々は新たな疑問を提示する。
「続けますね?L3コロニー群はたしか最前線の補給基地を兼ねた索敵能力に優れた警戒システムを持っていますね?長距離レーダーになぜ探知されなかったのでしょう?」
「私思うのですが.........このデータを見る限り数隻単位で転移してきていますわ....。」
「まさか!瞬間物質移送機??」
「ZEEK中佐....その瞬間物質移送機とはなんですか?」
詩織の考えを受けたかのようにZEEKが答えるが他の人間は??を浮かべるだけであった。
「フェサルーン大佐の疑問にお答えしますわ、大佐....飛鳥沖会戦の折桜小路大佐を救出した手段を覚えておいでですか?」
「たしか...いんと...失礼長くてよく覚えていないのですが物質転送機の類を使ったと聞いております。」
「その通りですわ....正式にはイントルードディメンションエリア転送装置といいますの、これは空中都市”飛鳥”に残されていた空間転移型ミサイルやラグナロクの超空間転移航法”フォールド航行”を我々の技術で扱えるように再現しようと試みたモノですわ.....まだ実験段階ですけれど....人体に過度の負担がかかるのが問題ですわ。」
「しかし...敵艦隊は無人.........なるほど空間単位で艦隊を転移させる兵器ですか...厄介ですな。」
詩織の答えを聞きフェサルーンは腕を組んで考え込んでしまった。
「それよりも厄介なのは飛鳥沖会戦で桜小路大佐の使った戦法...超空間転移による艦隊への直接打撃の対策が.........」
ZEEKの戸惑いに答えたのは奈々であった。
「石原さん?神器級は.......空間転移攻撃への対策が施されているんでしたよね?」
「肯定...ですわ...いまだにステムが解明できていないのが口惜しいですけれど。」
「では....こうしましょう大和を旗艦とし随行艦はラグナロク、二水戦(*)のみで作戦行動を行います」
「司令!我が二水戦は通常艦艇で構成されておりますが。」
珠蓮の異議に奈々は笑顔で答えた。
「今までの戦訓から空間転移型の攻撃は高速で移動する艦艇への攻撃は座標軸の固定が上手く出来ないため実施は不可能とされています・・・したがって艦隊至近への艦載機による奇襲攻撃が予測されますそんな戦場に大和とラグナロクを丸裸で出すわけにはいきませんからね。珠蓮さん頼みましたよ?」
「頼まれましょう?」
珠蓮のおどけた返事に奈々は満足して微笑みながら頷くと周りを見回し..指令を発した。
「敵艦隊の意図が予測できませんので仕方ありませんが私は通常艦艇を率いここで対応します....派遣艦隊の指揮はアーダルベルト・フォン・ノイエ”准将”に執っていただきます。」
奈々の命令に一同の視線がノイエに集まる
「准将...ですか?」
「はい...元々ノイエ准将は着任と同時に昇進の予定だったんですけれど.....いろいろありましたからね....でもクレア殿下の期待に見事こたえてくれると信じてますよ?」
突然の命令で呆然としたノイエではあったが奈々の意図的な微笑みにニヤリと笑うと”色気のある敬礼”を奈々に返し力強く答えるのであった。
「微力を尽くして!」
「出撃は明朝マルロクマルマル時各員の奮闘を期待します。解散!」
そして最後に奈々はもうひとつ爆弾を落とした。
「あ...いい忘れましたが...今回の作戦にあたり”イグナス監視基地”より艦載機部隊の補充を行います、近衛少佐...統括をお願いしますね....補充部隊の隊長は”大佐”ですけれど扱き使っちゃってかまいませんから。」
奈々の意味ありげな微笑と周りからのニヤニヤに席を離れようとしていた葵は顔を真っ赤にして叫んだ。
「しっ司令!からかわないでください!!!」
「でも....葵姉さん...良かったですね」
「...........................うん」
しかし.....そばによってきた茉莉慧の本心からの微笑みに葵は今度こそ顔を真っ赤にして小さく頷くだけであった。


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あとがき
ZEEK :四拾四話です
茉莉慧  :今回はやけに早かったですね(^^
葵    :読者が居たことがわかって俄然やる気が出たらしいわ
詩織   :葵のラヴコメモードも久々に登場ですわ
ZEEK :霧島司令が居ないことを除けばほぼ最強の面子です
詩織   :どういう展開になる予定ですの?
ZEEK :それは....
三人娘  :それは?.....
ZEEK :教えてあげません♪
茉莉慧  :ごまかしてるし.........
ZEEK :ってことで次回もやってやるぜ!!!(シュタッ)
葵    :それはそうと作者は感想に飢えてるらしいわ.....できたら”読んだよ”だけでも言ってあげると助かるわ
茉莉慧 :御意見御感想をお待ちしてます♪









続く?