<大和第1格納庫>
「ところで・・・葵」「な、なに?」
急に声色が変わった公人に葵はドキッとして振り返る...そしてお約束のように予想通りの暗雲としたオーラをまとった公人を見て葵は慌てた。
「居るんだろ?奴が・・・・・。」「ちょ・・・公人?」
すでに聞く耳持たずの公人に多分自分の制止は効かないであろう事を悟った葵は半分やけっぱちになって告げた....大事な所を秘匿して。
「沙由香叔母様のことは誤解だったのよ?...いいわ、銀の騎士は艦橋に居るわ。(そして茉莉慧もね....)」
葵の返事を聞いた公人は艦橋へ走り出そうとして・・・立ち止まった。
「どうしたの?」「すまんが艦橋まで案内してくれ。」「くすっ・・相変わらずなんだから」「悪かったな!」
相変わらずな公人に微笑む葵に対して公人はばつが悪そうな表情でぼやいた。
「あはっ桜小路大佐って.結構お茶目な人なんですね〜。」「ちょっ・・美都里?」「大丈夫ですよ〜隊長♪総隊長は大佐殿にかかりっきりですか「では葵に代わって私が追加訓練をしてあげましょうか?」」
引きつった笑顔のまま美都里が振り返るとそこには眩しいくらいの笑顔をした悠華が立っていた。
「月守先輩...怖いです...。」「飛鈴?...あなたも同罪ですよ♪」
しどろもどろになる二人に悠華はニッコリと最後通牒を告げるのであった。
「「あの...その...」」「大丈夫です♪痛くしませんから♪」
そんな様子を見た綾は二人の悲鳴をBGMにつぶやくのだった。
「先輩方....以前にも...こんな事があったような気がしますよ.....」





















少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第四拾六話 ”黒と銀と”

<大和 第一艦橋>
「全機収容を確認、エアロック閉じますエアロック内の与圧を開始、着艦燈の消灯を確認。全艦異常ありません。」
「ご苦労だった。しかし黒龍直属の部隊か......さすがにたいした錬度だ。」
「錬度だけなら我が艦隊も負けては居ません...ですけれど経験が圧倒的に不足しています。」
ノイエの呟きに答えた美瑠はいかにも当然といった風に答えた。
「副長は黒龍を知っているか?」「閣下のほうが良くご存知でしょう?」
美瑠の揶揄にノイエはふっと笑うと困ったように答えた。
「残念ながら良く知らんのだ......奴とは幾たびも刃を交えたというのに・・・な」
「そうですか......という事で茉莉慧?教えてくれない?私も興味あるわ。」
「え?」不意に話を振られて戸惑う茉莉慧に他のクルーも追従した。
「そうよ、皇国でお婿さんにしたい人NO1の桜小路大佐・・・その素顔に迫る!!」
「もうすぐ来ると思うんですけど・・・・」
「だ・か・ら♪妹の目を通した桜小路大佐像ってのを聞いておきたいの♪」「あう〜〜〜」
恋の意味も無い盛り上がりに茉莉慧は乾いた笑いをしながら反論するが楠葉の容赦ない突っ込みでもろくも崩れ去る。
「兄は.......例えるなら熱血漢、何処までも真直ぐで曲がる事を知らない人.......私が泣いているといつでも何処からかやって来て助けてくれる.........たとえるなら昔のアニメのヒーローみたいな・・そんな人です。でも...思い込んだら一直線なのが.......良い所でもあり悪い所でも有るんですけどね」
茉莉慧は少し誇らしげで...それでいて少しほほを染めながら兄 公人のことを説明した。


<大和格納庫>
美都里に最初に声をかけたのは坂井少尉であった。
「お嬢ちゃん達がお嬢の今の列機かい?」「お嬢?」「葵の事ですよ」
誰の事か解らない美都里に悠華が助け舟を入れる。
「そ...そうですけど」「どうした?」岩本少尉が聞き返す
「総隊長はお嬢というより....。」「お嬢というより?」「姉御....ですよね。」
「が〜〜はっはっはっは..ちげ〜ねぇだがなお穣ちゃん...お嬢だって最初からああだったんじゃねえんだぜ?」「え?」「そうだろ?飛鈴穣ちゃん?」「そうですね..赤松さん」美都里の返事に赤松飛曹長は豪快に笑うと飛鈴に話をふった。
「お嬢はいいとこのお姫様なのにそれをひけらかさないで俺達に接してくれたんだ...俺達にはそれが一生もんの宝だよ。」虎熊一空曹が懐かしむように言う。
「俺達みたいなのに囲まれてたらそりゃお嬢だって姉御になるな。」「「「ちげ〜ねぇ」」」
岩本少尉の指摘に全員が爆笑する。
「なんにしろおまえさん達が今のお嬢の背中を守ってるわけだ。」「って言うか私達が守られてるような...。」綾の呟きは全員の目の色を代えさせた。
「...........ひとつ揉んでやるか。」西澤飛曹長の呟きに全員が頷くと三人娘はがしっと腕をつかまれ..連行された。「さぁ.......シミュレータールームに案内してもらおうか。」
............この辺はやはり公人の部下らしい(笑)


<大和第一艦橋>
「ある意味理想の兄って感じよね」「いいなぁ・・そんな"お兄様”なら私も欲しいわ」
「でも・・・もう売約済みなんですよね」「そうね・・・・残念だわ......でも相手が近衛少佐じゃねぇ...」「私達じゃ太刀打ちできないです」
オペレーターたちの会話をBGMにノイエが感想を述べようとしたときそれは中断とともに苦笑に代わった。
噂の人物の乱入してきたのだ....しかも茉莉慧の評価の通りに。
「なるほど よき兄上のよ「見つけたぞ!銀の騎士!」........なるほど....一直線だな」
「何のことだ?」「いや..なんでもない...久しぶりだな黒龍」「貴様が皇国所属の艦艇に司令官代理として居座るなんてな・・・世も末だ」「で....何をしに来たんだ?着任の挨拶にしては物騒だが?」「決着をつけに..では不満か?」
だんだん艦橋の空気がぴりぴりしてきた所に意外な人物がとめに入る、周りは無謀な事と思っていたがどうも様子がおかしい......ずんずん近づいている茉莉慧に公人はまるで気がつかないようだ。
「兄様!!」「ま・・・茉莉慧?」「今は任務中です!任務中は任務に忠実にとおっしゃったのは兄様です!」「だから...な?」「兄様は私に嘘を教えたんですか?」「そ・・・そんな事があるわけ無いだろう!!」
妹の詰め寄りに公人はたじたじであった。
「飛鳥皇国宇宙軍黄泉方面軍航空戦闘団司令 桜小路大佐であります。方面司令の命により貴艦隊航空甲参謀指揮下に入ります。」公人はあくまでノイエに対して態度を崩さず不承不承であったが型どおりの着任の挨拶を済ませたがそれに対するノイエの返答はあくまで挑発であった。
「着任ご苦労....大佐殿?」「!!」「兄様!!!」ノイエの挑発に再び公人が激そうとした時それを再びとめたのはやはり茉莉慧であった....しかも涙目上目遣いのオプション付きである。
「茉莉慧...その辺で許してあげなさい?」「え?...だけど葵姉さん?」「ふっ...近衛少佐、指揮下の将兵のコントロールはしっかり取ってくれ。」「准将も!兄を挑発しないで下さい!!!」「.........すまん」
この場を支配したのは間違いなく茉莉慧であった




=================================
あとがき
ZEEK :四拾六話です
茉莉慧  :なんだか兄様が...........
葵    :情けないです・・・よね
詩織   :私は今回も出番がありませんでしたわ(^^;;;
ZEEK :まぁ正義のヒーローに良くあるお茶目な一面ということで
詩織   :.ページ稼ぎに見えますわ
ZEEK :うっ....(汗)
三人娘  :..........................
ZEEK :ってことで次回もやってやるぜ!!!(シュタッ)
葵    :それはそうと作者は感想に飢えてるらしいわ.....できたら”読んだよ”だけでも言ってあげると助かるわ
茉莉慧 :御意見御感想をお待ちしてます♪









続く?