<ラグナロク大艦橋>
「旗艦の艦載機隊収容作業は完了した模様です。」
「なるほど、近衛少佐の想い人の部下はなかなかに優秀だ。」
トリノの報告を受けフェサルーンは公人の部下の手際に感心する。
「艦載機戦では帝国は連盟に数歩譲りますからね。」
「ふっ..いうなクリーム、ノイエの部下もがんばっているが詰まる所,奴の部下は陸戦隊だからな。」
「それもそうですね....それにしても.........」
「な.....なんだよ?」
話に一区切りついたのかクリームはフェサルーンに意味ありげな視線を送る。
「お兄様の真似をしてもフェサさん...全然似合いませんね」『うんうん』「す..鈴ちゃんまで」
この一連のやり取りで環境の中の緊迫していた雰囲気が一気に払拭されたのは間違いなかった。
艦橋の誰もが警戒していたのだ、彼ら黒龍隊は帝国と常に最前線で戦ってきた部隊であり先日の飛鳥皇国防衛線でも刃を交えたばかりであったのだから.....。
(もし意図してやったのだとしたら...クリームは政治向きって事だろうけど...こいつの場合は素だろうな....。)
雰囲気の変わった艦橋でフェサルーンが心の中で呟いた内容を知るものはいない。





















少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第四拾七話 ”く・ち・び・る”



<豊川航海艦橋>

「親分!黒龍隊の収容作業が終わったみたいですぜ!」
「馬鹿やろう!任務中は司令と言え!....にしても公人の奴の部下はいつもながら見事な手際だな。」
「いや....まったくで」
直衛艦隊司令の珠蓮中佐はキャプテンシートに座りながら大和の方を見て居た。
どうでもいいけど椅子に虎の敷物がかけてあるように見える気がするのは......きっと幻覚だろう。
しばらく何か考えて居た珠蓮であったが急にニヤリとすると。
「おい通信(長)!」「なんですかい?」「こっそり大和に繋げ....ばれないようにな?」
「何でですかい?」「おもしれ〜ものが多分見れるぞ!」「へい!合点承知!」
珠蓮の言う面白い物に興味を引かれたのか躍起になって回線をつなげようとしている。
(公人の事だ、銀の騎士がいてぶつからない訳が無いって言うか奴なら突っ込んでく。そして艦橋には奴の妹も......近衛の言ってたことが本当なら...しっしっしっし今夜はうまい酒が飲めそうだ)
よからぬことを考えて居た珠蓮であったが口から出たのは全く別のことだった。
「野郎ども!黒龍隊と合流したって事は哨戒網を抜けるぞ!哨戒(長)!各艦に監視を密にしろと伝えておけ!気いぬいて旗艦に攻撃でも喰らう事が有ってみろ!暗礁宙域に叩き落してやるから覚悟しとけ!!」
「「「「「合点承知!!!」」」」」
.......この第二水雷戦隊.........本当に大丈夫だろうか(汗)

<ラグナロク大艦橋>
「ところで鈴ちゃん。」『何です?フェサルーンお兄さん』「あいつが黒龍を挑発する確立はどれくらいなんだ?」
『えっと...100%です』「だぁぁぁぁぁあいつがそんな大人しい訳が無い!起こる!絶対に問題が起こるぞ!!」
フェサルーンは鈴の答えを聞くまでもなく頭を抱えて居た。
「クリーム!!大至急大和に通信を繋げてくれ!!!」「は・・はぃぃ」
「はぁ.........うちの艦隊もだいぶ騒がしくなってきたわね........それにしても馬鹿ばっか。」
二人のやり取りを聞いていたトリノは一人呟いた....でもその台詞はやばいぞ。
「問題ないわ.......実際馬鹿なんだもの」
いや・・だからナレーションに突っ込みいれないでくれ
「班長?さっきから誰としゃべってるんですか?」
不審に思った部下がトリノに声をかける。
「気にしないで・・・単なる電波だから.....そんな事よりレーダー監視を怠らないでね、特に次元ひずみ反応、重力波反応に注意して。」
「「「了解」」」


<岩戸要塞司令長官執務室>
そのころ、この事件の真犯人は司令室で優雅にお茶をしていた。
「くすっ・・・今ごろ大和では面白いことが起こってるでしょうね。」
「ぱぎゅ?...面白いこと...ですか」
奈々の決済が終わった書類を整理していた澪が首をかしげる。
「近衛さんから聞いたことがあるんですが、桜小路君は桜小路さんの気配がまるでつかめないんだそうです.....その上、桜小路さんにからっきし弱いとか....艦橋にいるノイエ准将に食ってかっかった後が見ものでしょうね。」
「ぱぎゅ〜よくわかんないですぅ....桜小路大佐ってそんな直情径行型なんですか?」
更に首をひねる澪に奈々は意地の悪い微笑をしながら言い切った。
「桜小路君はとても素直な真直ぐな性格をしてますから・・・考えることなんですぐわかってしまうんですよ。」
「はぁ...そんなものですか....それにしても閣下」「なんでしょう?月守さん?」「少し趣味が悪いですぅ」「そうですか?」「そうですぅ」「くすっ......まぁ...いいじゃないですか...たまには」「ぱぎゅ〜〜〜」
ジト目で奈々を見る澪を他所に奈々の想いは別の所にあった。
(でも....あの二人が和解して協力関係になれば....大きな力になるのは間違い有りません....今回の鍵は...桜小路さん...貴女なんですよ)

<大和第一艦橋>
「ともかく....そんなに勝負がしたいならシミュレーターで納得いくまで勝負でもなんでもしてきてください!!!」
茉莉慧のこの一言は別の意味で波紋を投げかけた。
「やるか?」「面白い!受けて立とうじゃないか!」
このやり取りは艦橋で起こった一部始終を見て居た2人の指揮官に全く違った反応をもたらした。
『ノイエ!おまえって奴は!!!』『公人面白いもの見せてもらったぞ...近衛の言った通りだな』
「霧島司令から許可は受けている.......これはシミュレーターを使った公開訓練の一環とする」
「「ZEEK(艦長)???」」
突然声をかけられた全員が一斉に振り向くとZEEKは艦橋の入り口に腕を組みながらもたれて居た。
「今、言った通りだ....おまえさん達の勝負は艦隊の娯楽とさせてもらう....どうせ到着まで後2週間もある...納得行くまでやってくれ。」
「ふっ....面白い....黒龍」「なんだ?銀の騎士」「ひとつ賭けをしようじゃないか」
「賭け?」「そうだ......勝利者には美しき乙女のくちづけを....異論はあるまい?」
「だが...誰の事を指している?」公人は艦橋をくるっと見回した上で聞き返した。
「貴様の妹........でどうだ?貴様は妹の唇を守るため俺は奪うために戦う...なかなか面白い趣向だろう?」「「なんだって?(えっ?)」」
指名された茉莉慧と挑戦者の公人....二人はまった区別の意味で顔を真っ赤にした。




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あとがき
ZEEK :四拾七話です
茉莉慧  :あの.....私のくちびるなんですか?
葵    :負けたら公人はオシヲキね♪
詩織   :素敵なオシヲキを用意しないといけませんね
茉莉慧 :し...詩織さん負けるのが確定なんですか??(汗)
ZEEK :まぁ予定調和って事で何とかしますよ
葵    :どうするかってのはあえて言わないのね......
詩織   :それにしても...また出番がありませんでしたわ。
ZEEK :うっ....(汗)
三人娘  :..........................
ZEEK :ってことで次回もやってやるぜ!!!(シュタッ)
葵    :それはそうと作者は感想に飢えてるらしいわ.....できたら”読んだよ”だけでも言ってあげると助かるわ
茉莉慧 :御意見御感想をお待ちしてます♪









続く?