三式徹甲榴散弾:
戦艦の主砲などに使われる対艦載機用迎撃弾で、大型砲弾の中に小型の徹甲弾が子弾子として装填されている一種のクラスター弾である。
これを戦艦の主砲で射出し、接近する敵編隊の中央に打ち込む、打ち出された砲弾は安全圏を越えた後、近接信管もしくは無線で炸裂し爆散する。
この時、内蔵された小型の徹甲弾は周囲を薙ぎ払い、該当宙域の敵艦載機兵力を一気に撃滅するという砲弾である。
本砲弾は、いわゆる対宙砲弾である為、集中利用する事により、効果を飛躍的に高める事が可能である。
特筆すべき点は、艦載機戦力の充実していない銀河帝国軍では採用されていない点であろう。
帝国軍首脳部は、強靭な艦体を持つ帝国軍艦艇にとって、艦載機による被害は微々たる物と判断しており、同様の兵器の開発が遅れる一因となっていると推測される。
以上の事から、本砲弾は、亜細亜聯盟の秘匿兵器とされている。実践における本砲弾の使用例は稀であるが、艦載機迎撃戦において非常に有効な兵装であると言えるだろう。
尚、本砲弾は、旧日本帝国海軍に同様の砲弾が合ったことから、一般に”三式弾”もしくは”散式弾”と呼称されている。
少女艦隊戦記
エンジェリック・フリート
第五拾参話 ”逆撃(中2編)”
<大和・第一艦橋>
「敵艦の発砲を確認」
「なに?・・・まだ射程まで距離があるぞ??」
楠香の報告にZeekが反応する。
そしてその後に起こったのはまさに惨劇であった。
「艦載機隊の1/3が・・・・か、壊滅しました。」
「そ・・・そんな」
搾り出すように楠香が告げると・・・・艦橋に重い空気が垂れ込める。
「ええい!被害はまだ1/3なのだ・・・全滅と言うわけではない!!!うろたえるな!今ここでうろたえたら救える命も救えなくなる!今、我々がやらねばならないのは、一刻も早く敵艦隊を殲滅する事だ!全員の奮闘に期待する!!」
「「「「了解!」」」
Zeekの一括に艦橋が再び一気に活気付いた....そう、今は落ち込んでいる場合ではない。
「桜小路君、近衛中佐と黒龍隊を除き撤退させたまえ」
「そんな!!!敵の数はいまだ圧倒的なんですよ?見殺しにするんですか?」
突然の指示に驚いた茉莉慧はすかさず反論するがZeekの答えは完結を極めた。
「桜小路少尉!復唱はどうした!」
<麗風・近衛隊長機:コックピット>
敵の意表を突いた三式弾攻撃と被害の大きさに一瞬自失してしまった葵であったがすぐに気を取り直し、体制を整えた。
幸い彼女の機体には目立った損傷はなかった。
「ブルーリーダーから各小隊へ、<ザシュ>各機散開迎撃しつつ、被害報告知らせ....いい事?絶対固まっちゃ駄目よ?」
『こちらブレイカー1(悠華)左腕ユニット損傷なれど....つっ...戦闘続行に支障なし。黒龍隊、全機戦闘続行に支障なし。指示を請う。』
『エンジェル1(飛鈴)..っと...異常なし』
『エンジェル2(美都里)....くっ....異常ありません』
『エンジェル3(綾)同じくっ...』...
『エンジェル1よりブルーリーダーへ、被弾・戦線離脱機25、被撃墜5と推定、指示を請います』
弾幕と敵機と報告が飛び交う中、戦闘を維持しつつ葵は戦力の再編を図るしかなかった。
(黒龍隊は予測どおり..か....エンジェル中隊(飛鈴の部隊)は戦力喪失.....かっ.......あの3人以外は、まだまだって事ね。)
「ジルヴァーリッターズ...報告を!」
『......ザザ....こちらブレード1.....ザザ..<ガキーン..ドガ>....脚部被弾..戦闘に支障なし』
『ジルヴァー11よりブルーリーダーへ...我が部隊壊滅....戦力喪失機が60%を超えます。』
「なっ.....(壊滅じゃない!!!....先行してた上に散式弾じゃ無理もないけど......厄介ね)ジルヴァー11、中隊長ホフマン中尉はどうしたの?」
『ホフマン中尉は敵砲弾の直撃を受け....一瞬で........何なんですか!!あの兵器は!!』
葵は、ジルヴァー11の慟哭を受け止める事無く指揮官としての辛い判断をしざる終えなかった。
「エンジェル1、及びブレード1は、靡下の残存兵力を指揮し,速やかに帰艦しなさい。...ブレイカー1及びブラックドラグライナーズは私と共にここで撤退を支援してもらうわ。」
葵はその後の周りの反応をある意味予測できていた。
『ブレード1からブルーリーダーへ!私はまだ戦えます!』
『エンジェル2同じく!』
『エンジェル3同じく!隊長!!お供させてください!!!』
『悠華先輩は残るのに!何で私たちはダメなんですか!!!』
この時、特に指揮官はある意味冷静さを失っていた。葵はそれが手にとるように解り...またそれが悲しかった。
「エンジェル1....飛鈴!貴女は訓練を受けていないわ!エンジェル2,3も同じよ、使用兵器が解ってない帝国軍部隊は論外!何よりブレード1...貴女の機の損傷じゃとても戦闘維持は無理よ....聞き分けなさい!」
このままでは意見が平行線になる(例によって敵弾をかいくぐりながらと言うのは彼女達の練度の高さを証明する証ではあるが、この際それはおいておく)と思われたその時、葵にとっては救いの女神が現れたのだ。
『デルタ1(茉莉慧)より各機へ、ブルーリーダー及びブラックドラゴライナーズを除く全機は速やかに帰艦せよ!繰り返す、ブルーリーダー及びブラックドラゴライナーズを除く全機は速やかに帰艦せよ!』
(助かります!Zeek先輩)
そう....Zeekはある意味こうなる事を見越していた。黒龍隊は三式弾幕下での戦闘訓練を受けている、そしてその訓練を実施したのは他でもない、葵である事を知っていた。
「いいこと!固まる事無く一目散に逃げなさい!身近に居る身動きの取れない戦友をつれて帰るのを忘れるんじゃないわよ!....後は、後は私たちが絶対通さないわ!」
<ワルキューレ・ラミル少佐機:コックピット>
(くっ.......蒼き稲妻なんかに後れを取って!!!団長にどの面提げて会えって言うのよ!)
葵の撤退命令はラミルにとっては屈辱以外何者でもなかった。
桜小路公人とアーダルベルト・フォン・ノイエ....この二人の不世出のエースに率いられた部隊の片方は指揮官不在時に有効な戦力たりえないと(少なくともラミル少佐は)思ったのだ。
そして、それは......絶対的な隙を生み出した。
「なっ!!!!!」
ラミルが気がついた時、メインモニター一杯に広がる敵機の姿を確認した時......ラミルは己の失策と死を悟った。
(シノマ姉様........ごめんなさい..帰れそうにありません)
モニターには不気味に輝く敵機のデュアルアイが輝いていた。
<帝国本星:王宮ノイエサンスーシ:クレリア皇女執務室>
「殿下.......本日決済分の書類をお持ちいたしましたわ。」
「そのようですわね」
いつものように山のような書類をにこやかに運び込んでくるシノマに、クレアは諦め顔で応じた。
「まず..このしょる(パチッ......チリン........。)....あら?」
クレアに差し出した書類の上にシノマのイヤリングが鈴の音を立てて落ちた。
(これはラミルちゃんからプレゼントしてもらったイヤリング...........ラミルちゃんの身に....何か....なければいいのですけれど。)
一瞬シノマの顔に浮かんだ不安にクレアは怪訝な顔をする。
「どうかしたのですか?シノマさん?」
「いえ....私事でございますわ....殿下のお気になさることではございません。...それではこちらの書類からお願いいたしますね」
(ラミルちゃん....どうか無事でいてくださいましね)
シノマは、その瞬間だけ遠き宇宙(ソラ)で戦う従姉妹に思いを馳せていた。
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あとがき
ZEEK :五拾参話です
葵 :あら...今回も思ったより早かったわね
ZEEK :あの.....その......
詩織 :と言いましても前回長いんできった話の途中ですし
茉莉慧 :にしても.......まだ続くんですか
葵 :......本当に次回終われるのかしら?
ZEEK :....................................すまん
葵 :次回は早めに更新する事ね
ZEEK :くっ........次回もやってやるぜ!!!(シュタッ)
葵 :それはそうと作者は感想に飢えてるらしいわ.....できたら”読んだよ”だけでも言ってあげると助かるわ
茉莉慧 :御意見御感想をお待ちしてます♪
続く? |